劇場公開日 2019年6月7日

「難海」海獣の子供 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0難海

2020年4月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

興奮

難しい

『リトル・フォレスト』などで知られる五十嵐大介による数々の賞に輝く同名作コミックを、『鉄コン筋クリート』などで知られる気鋭のスタジオ“STUDIO4℃”がアニメ映画化。
監督は『ドラえもん』に多く携わった渡辺歩、音楽は久石譲、主題歌は原作ファンだという米津玄師…と、協力布陣。
声の出演も芦田愛菜(芦田先生上手過ぎです…)、森崎ウィン、稲垣吾郎、蒼井優、田中泯、富司純子…と、豪華。
才あるスタッフ/キャストが集い、確かに独創的で魅力ある作品なのだが…、賛否両論も分かる。

中学生の少女・琉花は夏休みの初日、部活でトラブルを起こしてしまう。相手が足を掛けてきた事に腹が立ち、肘で相手の顔をぶち、反撃。悪いのは全て琉花にあるとされ…。
心の底では悪いと思っているが、それを口に出して言う事が出来ない。
家では母親がビールを飲んでばかり。母親とコミュニケーションも取れず…。
家にも学校にも居場所が無い琉花は、今は別居している父親が働く水族館へ。小さい頃はよく水族館に通っていた。
そこで出会ったのは…。

その昔、オオカミに育てられた人間の子供の話は有名だが、こちらは驚き!
琉花が出会ったのは何と! ジュゴンに育てられた兄弟…!
これが漫画のフィクションで良かった…。(←当たり前だ!) それでなくともファンタジー!
(にしてもお父さん、「彼はね、ジュゴンに育てられたんだよ」って、フツーの顔して言うか、フツー!)

兄弟でも見た目も性格もまるで違う。
弟の海。黒髪、茶色の眼、浅黒い肌。性格はフレンドリー。
兄の空。金髪、碧眼、白い肌。性格はクール。
海とはすぐ仲良くなるが、空とは初対面が最悪。『耳をすませば』的に言えば、「ヤな奴ヤな奴ヤな奴ヤな奴!」。
が、次第に水族館で彼らと会う事が楽しみとなる。
水族館の船で沖に出たり、子供らしい遊びも。
夏真っ只中。青い海、青い空、白い雲…映像も美しい。
夏アニメは見ていて本当に気持ちいい。
(が、人物キャラは不気味で強烈インパクトキャラも…。特にあのバアサン。)

万人受けしそうなジュブナイル・ファンタジーかと思いきや、予想だにしない展開へ。
そもそも空と海は人間の子供なのか…? 何処から来たのか…?
一応検査などで人間の子供とされているが、時折水に浸からないとダメで、不思議な言動も。
海に“人魂”が落ち、魚たちが光を放ち、鯨が現れ、海の生き物たちが日本へ移動を始める不思議な現象…。
ある時、琉花は空から“隕石”を託され、そして空は…。
一体、何が起きようとしているのか…?

生命や自然界と、ヒト。
海、そして宇宙へ、壮大な展開。
神秘的でイマジネーション溢れる映像や世界観には圧倒される。
例えるなら、『魔法少女まどか☆マギカ』の最終話。
…しかしまあ、難解。『ペンギン・ハイウェイ』もなかなかだったが、テーマ性も含めこちらの方が難しいだろう。
宇宙やこの世界の全て、ヒト個人の不思議、関わり。
海の生き物たちは言葉を発しなくとも伝え合う事が出来るが、人は出来ない。人と人の繋がりは時として複雑だが、だからこそ尊いもの。
家族や学友、そして出会った忘れる事の出来ないひと夏の友達…。
この空や海のように、少女のひと夏の成長譚として、切なく暖かく終わるも、自分の中でも賛否両論。

一度だけでは受け止め切れない。何度か見なくては。

近大
かいりさんのコメント
2020年4月14日

振り返ってみると『シェイプ・オブ・ウォーター』にも似た感じがします。芦田先生には、おそらくマルマルモリモリを踊っていた頃でも私は知能が負けていたと思います。

かいり
bionさんのコメント
2020年4月14日

僕も芦田愛菜の演技力というか声の表現力にびっくりしました。

bion
bionさんのコメント
2020年4月14日

ロングラン上映だったので、なんとなく見たんですが、自分が大好きな宇宙と生命がテーマだった上にとんでもない映像美だったので、トランス状態におちいりそうでした。
2019年のアニメは『海獣の子供』と『スパイダーマン:スパイダーバース』が自分のなかではベストです。知人に薦めても、怪獣の子供?って聞き返されて説明が大変でした。

bion