「自己肯定の物語」海獣の子供 gedoさんの映画レビュー(感想・評価)
自己肯定の物語
この映画は自己肯定の映画なんです。
自分という存在の不確かさに対する、漠然としているが、しかし自己の全てを無意味に感じてしまうほど自分にとって重要な、とてもとても大きい不安。
「この世界にとっての自分とはなんなのか。」
この問いに対して理屈抜きで、海も宇宙も、この世にある全ての存在と貴方は区別されない。この世界というのは貴方なのだと。
つまり、世界の一部のとしての自己存在、相対性の中の絶対性ではなく、唯一無二の貴方というのは他の何かにその存在の根拠を求めるまでもなく絶対なのだと。
「貴方は貴方」
この言葉で全てが完結してしまえる程に、その存在を全力で肯定しきる。
とてつもない優しさで世界を包もうとしている。そんな映画なんです。
海、宇宙、そして生命について、一見するとスケールが大き過ぎて難解で、理解が追い付かないと思うかも知れない。
なんだが抽象的なことばかり言うように聞こえるかもしれない。
しかし、それはあくまでもこの作品の表現の手段に過ぎないんです。
長くて短い夏の間に、一人の女の子が自分の物語を歩み始めた。ただ、それだけの物語なんです。
余談
綺麗ごとばかり並べているように感じると思います。
ただ、映画を作っている人間も完璧ではありませんから、そこを想像で補うことが観客にも求められる力だと思います。
この作品は、もがきながらも全力で何かを伝える努力をしていますから、こちらも必死で受け取ろうとする。
粗探しでなく本質を捉えようとした結果の感想がこれなだけです。
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