「自分ならこうする」海獣の子供 komeさんの映画レビュー(感想・評価)
自分ならこうする
米津さんのpvのあまりの美しさに映画を観ることを決めた。原作は以前から気になっていたこともあり映画を観る前に読んでみた。
その状況からの映画感想。
うーん、原作をどう切り取って2時間の内容に納めるか・・・
後半の「祭り」の描写に、監督も結構悩んだのではないかと勝手に推測した。
色々モヤモヤが残る。
中途半端に少女の心情に沿うよりは、原作の所々に入れられている「海の挿話」のような、海の怖さ・不思議さをもっと強調しても良かったのではないかと思った。
あと、この短時間に色々な人物を入れるのは消化不良を起こす。
アングラードなんて、ただ意味深なことを呟くお前なんやねん的な人物でしかない。キャラ的に空とだぶるし。
自分だったらアングラードもデデもカットして、ジムの過去「海の少年との出会い」を描く。
ルカが海女の家系であること、母が子供の頃の海で経験した約束も入れる。
アングラードの存在をルカに託して、海・空と同じ「ニオイ」のする少女へのかすかな嫉妬をジムに抱かせるぐらいの変更もありでは?
詩的な言葉もいらない。ジムの過去で、島の古老が呟く「星の、星々の・・・」の言葉を入れたらそれで充分ではないかな。
あとは最低限な科学的なことをジムに語らせて・・・軍事関係者との云々もいらないわ。
空いた時間で、世界中の魚たちが光となって消えていくこと、世界各地に出現する海の子供たちの存在を描いた方がもっと不気味さと海の深遠さが表現されて面白いかも。
あとせっかく米津さんが椅子の歌詞入れてるんだから、椅子のエピソードも入れて欲しかった。そしたら、さして人物の内面描写が無くても、ラストで椅子の映像見てキュンと出来るのに。
後半の祭りは、原作をそのまま忠実に再現した方が、妙に受胎の映像入れるより迫力が出たと思う。
映像美がものすごくクオリティが高いだけに残念だった。
ただそうなると、空や海の子供たちがバラバラに食い散らかされたり、海がルカの口に手を突っ込んで隕石を取り出して飲み込んだりと、かなりグロい内容になり(だがそこがいい)映画化そのものが頓挫する恐れあり。
五十嵐さんの作品はグロさや怖さが魅力なので、そういった方向に思い切り振り切って孤高の道を突っ走って欲しかった。
原作が以前からずっと気になっていて、でも少年二人と少女一人の三角関係的なウザい話だったら嫌だなとずっと手をこまねいていたので、今回の映画化をきっかけに、原作を手にすることができて、そういう意味でも、映画には感謝です。