「映画を観たあと、原作も読んで欲しい。」海獣の子供 320さんの映画レビュー(感想・評価)
映画を観たあと、原作も読んで欲しい。
原作と言いたいことが正反対の方向に行っているように見えました。
原作は、海と陸、自然とヒト、男と女、が理解しあえないけれど、それでも、どうしようもなく繋がっているという様をとても丁寧に描いています。
私は琉花の両親が、流花を心配して喧嘩するシーンが書き換わっていたことがとてもショックでした。原作だと、お前は人とどう関わればいいかわからないだろうと言われた母親が、嫌いなわけではないといった旨を父親に伝えます。それはもう断絶で、諦めで、どうしようもない愛しさを孕んでいるシーンだと私は感じていました。
映画では、桃を食べておそらく子供を作ったのだろうと、汲み取れる描写になっていたと思います。どうしてあの2人を和解させたのでしょう。最後に琉花が友達と和解したような描写がされていたことも悲しかったです。
原作でポイントになるシーンがかなり端折られていたことも悲しかったです。母親の世界に対しての目線、世界各地の海の伝承、女性と海の関係性、彼岸と現世の関係性、ジムが犯した過ち、なぜ全て端折ってしまったのでしょうか。時間制限があるとはいえうまいやり方を考えていただきたかったです。
せめて椅子の話は端折らないで欲しかった。あのストーリー展開ではなぜ、米津玄師が歌詞の中に椅子を取り入れたのかもわからないじゃないですか。
映像はとても綺麗でした。魚の動きも種類別に丁寧に作り込まれていて、素晴らしい映像だったと思います。でも、原作の肝心な部分を書き換えられてしまったような気がして腑に落ちませんでした。
"分かり合えないけど繋がっている"は、確かに原作の大きなテーマの一つでしたね。他の方の映画レビューを読んだり自分で映画と原作を見比べると色々発見がありそうで、映画公開以降原作を読み返したくて仕方なくなっているので、私はやっぱり映画化されて良かったなと思います。