「Don't think, feel.」海獣の子供 鯨さんの映画レビュー(感想・評価)
Don't think, feel.
大切なことは言葉だけでは表現しきれない。
ストーリーがあるようでないような、アクションがあるようでないような。
壮大なファンタジーのようで、目の前の出来事のような気がするし、今どこにいるのか分からなくなる。
ただただ、美しい映像と音楽が画面からあふれてきそうになる。
美し過ぎると、逆に怖くなる。
吐きそうなぐらいの美しさと、目から入ってくる情報量。色が美しくて感動していたら、全然映像を追いきれない。
退屈で眠たくなる、でも目を閉じたり逸らしたり出来ない。目を開けてずっと見ていたい。
伝えたいことはなんなのか、とか
どういう風に表現したかったのか、とか
理解しようとしてもしきれない。
ただ見て、感じる、感じたことは各個人の幅の広さだよ、と言われているような気さえする。
結局全てをどういう風に作りたかったのかは原作や監督本人たち以外には全部知りようがないけれど
これを作った人は、わたしとは違う生き物だということだけが分かる。
すごい。
同じ人間でこんな美しいものを作ることができるなんて。どういう思考回路を持っていたらこんな美しいものを作れるのか。
曖昧な表現をするくらいなら、ここまでやってみる、理解されなくて酷評されたとしても、それでも、自分はこう思う、こう作る、みたいな気概があるから、目をそらせないのかもしれない。
個人的には、絶対に映画館で見たほうがいいと感じる。
音と映像の雨の中を、1人で彷徨うような、それこそ膨大な海の中を泳ぐような感覚は、映画館のスクリーンの前でしか味わえないと思うから。DVDで見たら、なんの良さも伝わらなくて寝ちゃうよ、これは。
最終的にはストーリーというか、哲学というか、鶏が先か卵が先かみたいな禅問答をしているような気持ちにさせる。
結末もあってないようなもの。
評価が分かれるだろうなあ…。
きっぱりメリハリがあったり、エンディングで伏線回収するようなストーリーがいい人にとっては退屈で、失敗した!と思うのかもしれない。
どちらかというとわたしも、ミーハーだし、普段そういうメリハリのあるストーリーがすきだ。
でも、禅問答でも、ストーリーの意味がわからなくても、見終わった後には自分の中になにかが残る。
よくわからなかったけど、うまく他の人に伝えられる自信はまるでないけど、見てよかった、と思う。
ジブリのもののけ姫や崖の上のポニョのようなニュアンスが混ぜられている、世界が違うものとの対峙。
でも素は同じであること。世界は広いということ。そして、自分がその、宇宙や世界の一部であること。
見終わった後に、良かった映画はいつも
誰か身近な人に、これよかったんですよ!見てください!って言いふらして回るわたしでも、
言いふらさずに自分の中にしまっておきたい一本になったと思う。
わたしの周りの人が見てどういう反応や、見終わって何を感じたのかを聞いてみたい気もする。
とにかくすごい。
芦田愛菜ちゃん、ほんとになんでもできるなって思う。
蒼井優と森崎ウィンと富司純子はちょっと違うかな…。