「考えるな!感じろ! いつか4DXで観てみたいね」海獣の子供 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
考えるな!感じろ! いつか4DXで観てみたいね
よく頑張った!と褒めるべきなのだろう。
「リトル・フォレスト」、「魔女」など大自然をテーマにする漫画家・五十嵐大介の長編漫画のアニメ化。
五十嵐の圧倒的な画力による勢いを、アニメ化で殺すことなく、ダイナミックに再現しようとしている。その挑戦的な姿勢は観るに値する。
米津玄師の主題歌つながりの観客にも、"何がなんだかわからない"であろう、壮大な大自然の神秘のようなテーマは、"わからない"ということが伝わっていれば、正解とすべき。
原作は、"民俗学"や"天文学"や"海洋学"が混沌と並べられた、映画よりももっと考えさせられる内容で、読者自身のバックグラウンドによって知的にイマジネーションする作品だからだ。
水族館で働く父親を持つ、中学生の琉花(CV:芦田愛菜)は、まっすぐな性格すぎて、コミュニケーションの苦手な少女。家族も似たところがあり、ギクシャクしている。
琉花は、夏休みが始まったばかりのハンドボール部の部活でトラブルを起こしてしまい、学校での居場所を失う。
期せずして、"長い長い夏休み"が始まってしまった琉花は、父親の働く水族館で、ジュゴンに育てられたという不思議な少年・海(CV:石橋陽彩)に出会う。海には、一緒に育った兄・空(CV:浦上晟周)がいた。
夏休みに起きる琉花の不思議体験は、現実とファンタジーが普通に共存している設定の世界観で、考えれば考えるほど弾き返される。
少年・海と空は、ジュゴン(人魚姫のモデル)に育てられたという、"自然と人間の中間"にアイコニックに存在する。
そんな少年と触れあい、さまざまな体験をする琉花は、人間社会でのディスコミュニケーション(相互不理解)にぶつかっている少女。
言葉を持つ、人間同士さえわかり会えるのは難しいのに、自然や動物とコミュニケーションするということは、どれほど無限で未知なのか・・・。
さらに映画という尺の都合で、学術的な情報はことごとく端折っている。考えるな!感じろ!とでも言っているような作品だ。
これはこれで原作に対するひとつの解釈だろう。米津玄師も"海の幽霊"と、モヤッとオブラートに包んでしまったようだし。
ちなみに少年・海のCVがディズニー映画「リメンバー・ミー」(2018)の主人公ミゲルを演じた石橋陽彩というところが注目。声変わりしたのかどうかが気になる。
身体で感じるアニメという意味では、この大画面映像に、ぜひ4DX版チューニングしてもらいたい。水効果のないMX4D版は止めてね・・・あっ!TOHOアニメだから無理か(笑)。 わかるかな?
(2019/6/8/TOHOシネマズ上野/シネスコ)