劇場公開日 2019年6月28日

「自ら風をおこそう」凪待ち 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0自ら風をおこそう

2019年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

時間帯や季節、場所や地形によるもの…
日本ほど【風】を表現するために
用いる言葉が多い国はないと言います。

風は色々な面を持っている。
ときに優しくて、温かい慈愛に満ちていたり
ときに荒れ狂い、冷たく抗うことのできない
暴力に変わったりもする…

人生においての
風当たりの強さ・ベクトルの妙、数奇を
本作『凪待ち』を鑑賞してわたしは感じました。

“ 凪 ” とは海辺付近での【無風状態】、と同時に
性質が変わる一種の転換点なのだそうです。

主人公・郁男は様々な風に吹き当たる…
でもそれは自らが吹き入れた風でもあるが
他者から吹きかけられた風でもある…

ひとつひとつは小さな風だったとしても
重なり集束すれば人生、歩くのも
立っているのも難しくなる。そうなったら
ただ嵐の通りすぎるのを待つしかないのか…

ヒトが生きる歩みの道程で
追い風のときもあれば向かい風もある

風に翻弄される状況から脱するには…
他者が差し伸べてくれた好意であったり
自分が他者に差し伸べた好意だったり
そんな小さなことの積み重ねが
“ しけ ” から抜け出す、ひとつの手段なのかもしれない…

必ずしも〈凪〉が続けば人生が
好転しているとは思えないし
必ずしも〈しけ〉が人生に
悪影響だけを与えるとは思えない

肝要なのは風を
どう読み、どう受け、どういなすか
…ってことなのかな?

香取慎吾さんの新境地な快演に加え
白石作品の常連、吉澤健さん、音尾琢真さん
そしてリリー・フランキーさんたちの存在感が
作品を引き締めていました!

西田尚美さん、恒松祐里さんたち女優陣も好演!

でもわたし的には「宮崎吐夢さん」が
いちばんのお気に入りだったりします!

 ~わたしの白石 和彌 監督 作品番付~

1 止められるか、俺たちを
2 彼女がその名を知らない鳥たち
3 孤狼の血
4 凶悪
5 凪待ち
6 麻雀放浪記2020
7 サニー 32

その他の作品は未鑑賞につき失礼します

野々原 ポコタ