「妻の深い愛を感じました」かごの中の瞳 Tina Saitoさんの映画レビュー(感想・評価)
妻の深い愛を感じました
説明がなく、観る人によって捉え方が変わる内容でした。とても考えさせられ、おもしろかったです。
ジーナに対する夫の愛は支配だったように感じました。自分だけを頼りにする妻が愛しくて献身的に支えていたが、その妻が見えるようになって本来の自由奔放な自分を見せるようになってくると夫は焦りを感じるようになっていく。直接的なシーンはなかったが、目薬に細工をしたのは夫だと考えられます。しかもその薬を調べて細工がされていたと判明し犯人は夫だと妻は気づいていた。本来の自分を取り戻しつつも夫に受け入れられないイライラはそのまま、犬の散歩で仲良くなった男性との不貞に繋がる。さらにその人の子供を授かるけど、不妊の原因が夫にあることを知らされていない妻は、そのまま夫の子であるかのように妊娠を告げる。この行動は、過ちを犯してしまったけど、夫がしたこと(目薬に細工し盲目に戻そうとしたこと)をすべて許し、一緒に子供を育てていこうとした彼女の決意と感じました。
ここで、2人の間に二つの大きな秘密が生まれたことになる。
妻を盲目にしようとした夫と、
夫以外の男性の子供を授かってしまった妻。
しかもお互いがそれを知っているけど、
お互いがお互いに黙っているという状況。
夫は自分の子のように子供を育てていこうと決意し、妻は夫のために盲目のふりを続けていくと決意する。
物語の終盤に、夫は妻が正しい目薬を自分に隠れて使っていたことを知り、妻は妻で、いなくなっていた犬を保護したと書かれた手紙を見つけ、そこに「白人の男性によって柵に繋がれていた」と書かれていたことから、犬を捨てたのは夫だと直感した。それと同時に、犬の散歩で仲良くなった男性とのことを悟られていて、さらにお腹の子は自分の子ではないとわかっていることに気づいたと思います。
お互いがお互いの秘密を既に知っていて
それでも一緒にいようとしている状況にお互いがついに気づく。
そしてコンサートの日、ジーナは自作の歌"All I see is you”を夫の目を見ながら歌う。
この歌を聴きながら、
「あなたが私を独占しようとしていたのをわかっていたけれど、それでも私は全て許してあなたについていっているのよ。今までずっとあなただけを見ていた。」という、妻の深い愛を感じました。歪んではいるけど…。
夫はここでようやく、「あぁ、妻は見えていたんだな。気づいていたんだな」と気づき、それでも盲目に戻ったふりをしている妻に対して、後悔とか押し寄せてきたんじゃないかと思います。それで運転中に泣きじゃくって事故を起こしてしまう。
最後には元気な赤ちゃんを産んで、それをしっかり目で見て幸せな表情をしているジーナのシーンで終わります。
この映画のいろんなレビューを見たけど、どれも「夫の異常な行動」とか「夫婦が壊れていく様子」と言う点にばかりフォーカスされていたけれど、
私は、この夫婦(というより妻の方の)深い愛を感じました。
いろんな解釈が生まれる映画は本当に素敵だと思います。
おもしろかったです。