「伝説の自動手記人形はこの映画をもって実在した」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン S.i.v.aさんの映画レビュー(感想・評価)
伝説の自動手記人形はこの映画をもって実在した
僕は本編未視聴組。
ただ、それでもボロ泣き思わずポカリを買わないとはしご視聴が出来ないと思うほどだった事をここに記そうと思う。
この映画のいいポイントは大きく3つ。
作画や声優の演技が全てに置いて自然で細かくリアル。
色彩豊かな実写では出せないリアルな背景。
壮大で丁寧な広がりのある音楽やサラウンド。
まあ、何につけてもいいんですよね。
挙げてないけどシナリオもいいし。
作画は自然で、重心移動すら演技として魅せてくれる作画は京アニのクオリティならでは。
細かな足の移動ですら心象描写に使ってるし、正にドラマ。
背景に関しては映画館のプロジェクターでかなり変わるけれど、色彩のグラデーションがほんとに豊かで、黒潰れや白飛びなんてのはほぼ1割。
ここまでのダイナミックレンジは実写でもかなり難しい、デジタル作画ならではの色彩だと思う。
また、音楽も綺麗で、効果音も極端にサラウンドらしいと言うよりかはさりげない自然な音出し。
反面、ほんとにリアルなドラマを見ているような展開なので、途中でじれったいと思ったりしてしまうのはあるかも。
カメラワークや心象描写にシフトした作品なので、タイプではない人もいると思う。
ちなみに、リアルだリアルだと二・三回言ってるけど、これを実写では無理。
カメラワークも非現実的な箇所も多いし、波の絵としての完成度の高い構図と描写、背景美術の色彩の多さ、作画と声優によるそこに実在しているかのように掛け合わされた演技は、実写では嘘が増えてつまらなくなる。
結局この話は創作で、あくまでも嘘の世界なのに、何故ここまでヴァイオレットに感情移入が出来て泣けてしまうのか。
それは単に、このクオリティをもって伝えたかったテーマとそれに見合った表現力の結果なんだと思う。(上から発現すみません)
どんな時代で、どんな生き方をして、どんな世界観で、どんな技術があって、どんな考え方をしていたのか。
その時の時代に生きた人たちをここに表したかったんだと思う。
それほど、僕の目の前にはヴァイオレットが、この世界が本当にあったかのように、歴史上の人物として生きた人なんだと、まるで実在しているかのように感じられたのだ。
戦争に巻き込まれ、感情が欠如し、手紙を通じて人の心を知り思いやる気持ちが芽生え、大事な人に愛してると言われた言葉とその人を思い続け。
伝説の自動手記人形、ヴァイオレット・エヴァーガーデンが生きていたと思わせるクオリティーとリアリティー。
京都アニメーション大賞唯一の大賞作であるこの作品と、京アニ並びに関係者の人達が目指していた、本当のゴールだったのだと、そう思う。