「そこには確かに「あいしてる」があった」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン つばささんの映画レビュー(感想・評価)
そこには確かに「あいしてる」があった
85本目
これは、今まで沢山の人の物語に寄り添い感情を知ってきた1人の少女が、ついに自分の感情と向き合う心の物語。
TV版全13話に外伝と、丁寧にヴァイオレットの成長を描いてきたからこその繊細な成長の表現は、全てを見守ってきたファン達への贈り物のように胸と涙腺に突き刺さる。
今回の話しはヴァイオレット・エヴァーガーデンという1人の少女の成長譚の締めとして素晴らしい仕上がりでした。
ずっとずっと会いたかったギルベルトについに会えるかもしれないという喜びと戸惑いと混乱と恥じらい、全てが入り混じり「気持ち悪くないでしょうか…」と漏らすヴァイオレットに、こんなに人間らしくなったんだねぇとしみじみしてしまう。
この作品、本当に何から何まで「ずるい」。
完全にずるい展開のオンパレード。
そもそもTV版で号泣必至のアンのエピソードから始まるあたりが本当にずるい。
そんなの泣いてしまうわ。
「その展開はずるいよ(泣きながら)」
「その表現はずるいよ(泣きながら)」
「そのセリフはずるいよ(泣きながら)」
「ここでその曲はずるいよ(泣きながら)」
何回出てきただろうか…本当にずるい(泣きながら)。
特に今作で描かれるユリスのエピソードは本当にずるい。そんなの泣くに決まってるじゃん。
劇場内から啜り泣く声、鼻を啜る音、抑えきれない嗚咽が聞こえて来る。当の自分も嗚咽を抑える気もなくマスクもタオルもグショグショになってしまった。
(プレミアボックスシートで良かった…)
観客同様、最後には泣きじゃくるヴァイオレットが、ついに作中ではギルベルトと対話することなくエンドロールを迎える。あんなに感情を出すことがヘタクソだったヴァイオレットが、感情に溺れてしまう。
それをそのまま表現したことに脱帽。
だって機械のように感情が無かったんだよ?最初は。
そんな女の子が泣いて泣いてどうしようもなくて、太ももを叩いても叩いても言葉が出てこないんだ。
エンドロール後、きっと沢山の人たちに愛されて素敵な人生を送ったんだろうなというのが良くわかる、余韻を残す終わり方が最高でした。
作中ではついぞ「あいしてる」を直接伝えることはしなかったけど、そこには確かに「あいしてる」があった。
沢山の人達の「あいしてる」で生まれた「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という1人の少女の生涯がそこにあった。
素晴らしい作品でした。
個人的にここ数年で1番泣いた作品でした。
京アニといえば悲しい事件がありましたが、
この作品が無事公開されたことで、報われた方々が沢山居るのではないかと思います。
残された人達の悲しみではなく、そこに共にあった想いが形になったような素敵な作品でした。
自分たちも「あいしてる」を知り、「あいしてる」を伝えていきたい。
そう改めて思い直せたような気がします。
この作品を世に送り出していただきありがとうございますという感謝を持って、この感想を終わらせたいと思います。
本当に素敵な作品をありがとうございました。