劇場公開日 2019年8月30日

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「1960年代の香り漂う、映画と西部劇に オマージュを捧げる映画愛ある作品」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)

3.51960年代の香り漂う、映画と西部劇に オマージュを捧げる映画愛ある作品

2025年8月31日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

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 いたるところに1960年代の香りがプンプンする。モノクロのTV、往年の映画界のスター、今と比べて古いと感じるハリウッドの街並み、ヒッピーたち…。この映画を観たらもう60年代にタイムスリップした感じを受ける。
 その中にディカプリオやブラッド・ピットを紛れ込ませたところで全く違和感なし。この時代でも彼らはスターとしてやっていけるんだろう。

 しかし、ただ映画全般にオマージュを捧げているのではない。この映画は

 西部劇、マカロニウエスタンにそれを強く捧げている。

 その製作の舞台裏を余すところなく見せているストーリーだけでなく、リックの相方:クリスが荒野の一味で面と向かうシーンなんてのはもう西部劇。もっていない銃をいつ発砲するのかドキドキするような駆け引き。相手はヒッピーたち、しかしその戦うスタンスは西部劇のよう。この映画は最早西部劇と言っても過言ではないかも。

 本作においては、ブラッド・ピットの演技は常に輝いていた。ディカプリオも演技巧者なのは間違いない。しかし家のアンテナを直すシーンで上半身裸になる場面は一級品。50歳代になってまだ魅せることのできる肉体美。そしてヒッピーたちとの殴り合い(クリスの圧勝)では心は笑顔が見えるのに拳には血が付いている。その飄々たる姿に目が釘付け。これは彼にしかできなかったと思う。まさしくオスカーに値する演技っぷり。
 また、タランティーノの過激で暴力的な演出は今回も健在。フェチ的な演出も健在。ストーリーはなんと現実を改ざん。「イングロリアス・バスターズ」「ジャンゴ 繋がれざる者」と続けて歴史的事実を曲げた作品を作っているが、アクションとしてみるならやっぱり面白い。それを堂々とやってのけるあたり、彼は奇才だなぁと思う。

 しかし、正直なところシャロン・テートのパート必要だったのか?助演でありながら、ストーリーにほとんど絡まない。正直いなかったら逆に見やすかったのではないかと思うほど。軽く混乱を期したことも、不必要と感じる要因だ。もしくは、クライマックスでシャロンとリックが会うシーンを設けることでパラレルワールドを観客たちに想像させたかったのか?こんな未来だったら良かったのに…と。

この映画はどのシーンをとっても見渡す限り古き良き時代に対する映画愛に、西部劇に対する愛に満ちている。タランティーノはほんとに映画が好きなんだろう。そして自分の好きなジャンルやその思いが詰まった作品であると感じた。

asukari-y
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