「むかしむかしハリウッドに、ニコルソンみたいな顔をしたおじさんとやけにムキムキなおじさんがいたそうな…。 これぞタラちゃん流、夢と希望のおとぎ話✨」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
むかしむかしハリウッドに、ニコルソンみたいな顔をしたおじさんとやけにムキムキなおじさんがいたそうな…。 これぞタラちゃん流、夢と希望のおとぎ話✨
1969年のハリウッドを舞台に、落ち目の俳優リックと彼のスタントマンであるクリフ、そして新進気鋭の女優シャロン、三者三様の人生を描き出すサスペンス・コメディ。
監督/脚本/製作は『パルプ・フィクション』『キル・ビル』シリーズの、名匠クエンティン・タランティーノ。
かつてのテレビスターで今は落ち目の俳優、リック・ダルトンを演じるのは『タイタニック』『インセプション』の、オスカー俳優レオナルド・ディカプリオ。
リックのスタントマンであり親友、クリフ・ブースを演じるのは『セブン』『オーシャンズ』シリーズの、名優ブラッド・ピット。
リックの隣人である新人女優、シャロン・テートを演じるのは『アバウト・タイム 愛おしい時間について』『スーサイド・スクワッド』のマーゴット・ロビー。
ヒッピー集団「マンソンファミリー」の中心人物、テックスを演じるのは『シャーペイのファビュラス・アドベンチャー』『デッド・ドント・ダイ』の、名優オースティン・バトラー。
マンソン・ファミリーのメンバー、スクィーキーを演じるのは『I am Sam アイ・アム・サム』『オーシャンズ8』のダコタ・ファニング。
映画プロデューサー、マーヴィン・シュワーズを演じるのは『ゴッドファーザー』シリーズや『オーシャンズ13』の、レジェンド俳優アル・パチーノ。
マンソン・ファミリーのメンバー、フラワー・チャイルドを演じるのはテレビドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のマヤ・ホーク。
テレビドラマ「グリーン・ホーネット」のスタントマン・コーディネーター、ランディ・ミラーを演じるのは『ワイルド・スピード』シリーズや『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』の、名優カート・ラッセル。
マンソン・ファミリーのメンバー、スネークを演じるのは『アンダー・ザ・シルバーレイク』やテレビドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』のシドニー・スウィーニー。
👑受賞歴👑
第92回 アカデミー賞…美術賞/助演男優賞!✨
第77回 ゴールデングローブ賞…脚本賞/作品賞(ミュージカル・コメディ部門)/助演男優賞!✨✨
第85回 ニューヨーク映画批評家協会賞…脚本賞!
第45回 ロサンゼルス映画批評家協会賞…美術賞!
第25回 放送映画批評家協会賞…助演男優賞!
第73回 英国アカデミー賞…助演男優賞!
オタク界のレジェンド、タランティーノ。映画ファンから絶大な支持を集める彼の作品を私はほとんど観たことがない。学生の頃、『ファイト・クラブ』(1999)のブラピに惚れて彼の作品を漁りまわっていた時に出会った『イングロリアス・バスターズ』(2009)。「ブラピvsナチ!?絶対オモロい奴やん!!」と喜び勇んで鑑賞したのだが…。
まぁこれが退屈で退屈で😅今なら別の感想が生まれると思うのだが、当時は本当につまらないと思った。
この時かなりしんどい思いをしたのでずっとタランティーノ作品は意識的に避けていたのだが、ついに彼の作品に挑戦してみることに!!
率直な感想を述べると、やはり今回も退屈だった。
ラスト15分までは本当に物語が動かない。ただただ、リック、クリフ、そしてシャロン・テートの日常が描き出されるだけ。
ストーリー映画を観ているというよりも、むしろ彼らのホームビデオを観ているような感覚に近かったかもしれない。
確かに退屈だったのだが、だからと言ってこの映画をつまらなく感じたかというとそれはちょっと違う。
ストーリーを排し、キャラクター描写に注力。リックとクリフ、この2人にグッとフォーカスして見せることにより、呼吸や心音すら伝わってくるような親密さを彼らから受け取ることが出来た。
本作の作劇方法は、従来のエンタメ盛り盛りなハリウッド映画とは一線を画す。どちらかと言うと、「日常系」とラベリングされる日本の漫画やアニメに読後感は近い。
実はこの作品で描かれているのはたった3日の出来事。たった3日で、リックのこともクリフのこともシャロンのことも、みんなみーんな好きになっちゃった💕
出来る事なら『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』のように、いつまでも彼らの日常を眺めていたい♪
日常系と称したが、これは「何気なくとも幸せな日々」を描くような腑抜けた作品ではない。
1969年8月9日、ヒッピームーブメントの終わりの始まりとも言える「シャロン・テート襲撃事件」に向かい物語は前進していく。マーゴット・ロビー演じるキュートなシャロンが画面に映るたび、そして不穏な陰を忍ばせるマンソン・ファミリーの姿が映るたびに、怖い怖い恐ろしい恐ろしい気持ちに観客は誘導される。
誰もが認める本作の最も素晴らしく、そして最もスリリングな場面はクリフがヒッピーの女の子に連れられ彼らのねぐらへと足を踏み入れるところ。旧西部劇の撮影所に現れたアウトローの男と、彼を取り囲む無法者たち。ここで空気感が完全にウェスタン映画に変わる。
西部劇の撮影をするリックのパートから、本当にウェスタン的な状況に陥るクリフのパートへのシームレスな移行は嫌味なほどに上手い。リックの演技が生み出した緊張感を引き継ぎ、そこにクリフvsヒッピーが生み出す緊張感を更に上乗せする。そのことにより生まれるこのシークエンスの一触即発の雰囲気はもう凄まじいものがある。
さすがクエンティン・タランティーノ。そりゃ人気もあるはずだわ。
この映画が伝えてくれるのは、太陽が昇るためには夜空の星は沈まなければならないのだということ。
この諸行無常な理を全く悲劇的ではない形で描いているところに、タラちゃんの優しさというか映画への愛が詰まっているような気がします。
そして、もう一つ。本作にはお仕事映画としての側面もある。
自分の出演作を観客が喜んで鑑賞している。新進気鋭の女優シャロン・テートはその光景を観て満面の笑みをこぼします。
ベテランのリックは自らの演技を追究する。不甲斐ない自分を叱咤しながら、ついに渾身の演技を披露することが出来た彼の満足気な表情、そしておしゃまな子役の女の子に褒められた時の泣き笑いに、彼の役者人生の全てが表れている。
キャリアも立場も違う2人の役者のそれぞれの達成。それを並列して見せることで、演じるということに人生を賭ける者たちへの讃歌を高らかに歌い上げることに成功している。
クライマックス、クリフはヒッピーの襲撃により足を負傷してしまう。スタントマンにとっての生命線でもある足を傷つけられたクリフは、おそらくこの先今の仕事を続けていく事はできないだろう。本人もその事は自覚しているはずである。
今回の襲撃はリックがテックスたちに絡んだからであり、クリフは完全に巻き込まれた形である。普通なら自分の商売道具がダメになった怒りをリックにぶつけたりする展開がありそうなものなのだが、担架で運ばれる彼の表情は晴々としている。
役者の危険の身代わりとなるのがスタントマンの仕事。その仕事に誇りを持つ彼だからこそ、リックの身を守った自らの行いに胸を張っているのである。クリフを観客誰もが好意を寄せるであろうタフガイとして演出していることに、スタントマンという仕事に対するエールと感謝が込められているように思う。
ラスト15分は完全にコント。そんな都合よく火炎放射器があるわけねーだろっ!🤣🤣
おふざけを我慢できないというタランティーノの性格もあったのだろうが、観客の誰もが覚悟していたあの悲劇を「そういう悲しいことは描きたくありません!!」とでも言わんばかりにスカして見せたのはやはり彼の優しさ故なんじゃなかろうか。
露悪的なまでに暴力的ではあるのだが、だからこそ伝わってくる残虐な行いへの怒り。IF展開を描かずにはいられなかったのは、シャロン・テートへの鎮魂ないしは恩返しだったのかも知れない。
とっても可愛らしい好みのタイプの映画ではあるのだが、やはり160分オーバーというのは長すぎる。流石に冗長に感じてしまった。
また、物議を醸しているブルース・リーの描き方は確かにちょっと問題ある気がする。
大絶賛というテンションではないのですが、今後タランティーノ作品を掘ってみようかしらん?と思えるくらいには好意的な印象を持つ事が出来ました♪
…若い世代の観客だと、シャロン・テート事件について知らないということもあるかも知れない。そういう人がこの映画を観た時にどう思うのかはちょっと気になります。そこを知らないと全く意味不明な映画だよねこれ。
マンソン・ファミリーについては沢山映像化されているんだろうけど、自分が観たことあるのはデヴィッド・フィンチャー製作のNetflixドラマ『マインド・ハンター』(2017-2018)。このドラマを観ていたおかげで、テックスが登場してきた時に反応する事が出来ました。
獄中のマンソンとテックスが登場し、なぜ犯行に及んだかを語るこのドラマ。本作と併せて鑑賞すると良いかも知れませんよ!!
…にしてもブラピは相変わらずムキムキだねぇ。全然脱ぐ必要ないところで脱いでたよねぇ…。もうほとんどギャグみたいになってる。ハリウッドのなかやまきんに君だ。
そしてレオ様はどんどんジャック・ニコルソンに似てくるねぇ。もうあの美男子だった頃の面影は一切無し。レオ様主演で『シャイニング』(1980)をリメイクしてみて欲しい。レオ様vsニコルソンの顔芸対決が見たい!
史実を知った上でこの映画を観ると、監督のかなわない願いが叫びとなって聞こえてくるようですよね。
そして「このどうしようもない映画人」たちへの監督からの愛のほとばしりも。