「ハリウッドを担う頼もしい2人」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
ハリウッドを担う頼もしい2人
ディカプリオとブラピ両方好きだから必ず観たかった作品。個人的には、独身貴族で若いモデル体型の子大好き、演技キャリアは着実に重ねていくディカプリオと、家庭での存在感も大きく見せながら仕事とのバランスをうまく取っていて、でも離婚も経たブラピ。反対路線のプライベートを持つ2人だけど、ずっと第一線にいられる人気と演技力を兼ね備えた2人がそれぞれどんな役柄なのかとても気になっていた。仲良く演じられるのかな?とか。
結果、見て大正解。ディカプリオお気に入りのマーゴットロビーもまた出てるし、ディカプリオの、仕事デキるけどドラッグどんちゃん騒ぎ作品系の脚本なのか不安もあったが、実際は所々そうそうあり得ない展開もありつつ、落ち着いて心情描写を描いている作品。
そして、長年ハリウッドで第一線をはってきているからこそ、長年様々な俳優達の生き様や国を越えた関係者間の繋がりを見てきた目線で、こうして俳優達が築き上げてきた"ハリウッド"が続いてきてこれからも続くんだ、という未来を感じさせる作品。
かつてのエマワトソンのような子役の子。
お色気役としての端役出演でも満足できる、まだ一流でないからこそ無欲にハリウッドに存在する若手女優。
それすら叶わない、いつか本物の女優になることを夢見てヒッピーとして夢を抱くうち、夢を追う努力を忘れ安易にお金を稼ごうとしたり悪い仲間やドラッグに関わり堕ちていく者達。でも人々は殺しをテレビや映画を見て学びながら育つとハリウッドの影響力の大きさを示唆する。
一方、映画を見て育ち、若手監督として人脈を広げる者。そして若手俳優と若手女優の血を引く子供が産まれる予定。
キャリアを築くために、主役として次々推されている若手俳優。
かつてその推される側の立ち位置も経験しながらも、今は落ち目となりつつある中年俳優ディカプリオ。若手の引き立て役としてでも有り難く出る立場になっていくのは仕方ないがかつてとの違いを否応なしに自覚し、くさくさしている。
そのスタントマンとしてディカプリオを支えてきたブラピ。ディカプリオの仕事がないとブラピの出番もないから、アクションの腕は鈍っていないのに、実際ディカプリオの付き人としてドライバーや雑用をこなす。
ハリウッドに様々な立ち位置があって、それが各々の登場人物にうまく割り振られていて面白い。
求めて貰えているならば望まぬ役でも進んでやらねば、減ってきた仕事の中で貰えている仕事を大事にして爪痕を残さねば、とわかっているのに、自信もなくなりくさくさした気持ちをアルコールで紛らわし、自爆状態のディカプリオ。これではまずいと踏み止まるために出し切る演技をする。
でも、昔の作品での頑張り、葛藤しながらの今の作品での演技、見てる人はちゃんと見ていてくれていて。イタリア映画のオファーがあったり、褒めてくれる監督や子役がいたり、そういう事がモチベーションに繋がっていく。
この1人の中年俳優の様々な深みある感情が、ディカプリオの演技を通す事でじわじわ伝わってきて、どっぷり感情移入する。
ディカプリオは、①下降気味中年俳優②その中年俳優がその時その時の感情を重ねながら演じている西部劇スターやアクションスター③下降気味中年俳優の、周りには見せられない1人の時の焦りや不安を抱えるオッサン
の混ざり合う三役を演じ分けているわけで、本当に本当にプロフェッショナル。わざと、わざとらしくキモくやりすぎに演じたり、演技上手い人がダメな演技をとても自然に演じてる。
ブラピも、日影の身ながら必ずディカプリオに忠実で、誘惑に流されない誠実さがとても素敵。最後まで見せ場がなかなか来ないけど、ブラピの不潔は感じさせない男くささ、素の状態から滲み出てるとしか思えない、表情や目から溢れ出る優しさが最高。
最後、ヒッピーが復讐に来ても、「奥に1人寝てるだけ」と、庭にいるディカプリオを徹底して守ろうとする。そして、スタントやドライバーどころか、完璧なガードマン。先行き長い若者のヒッピーをこんなにしなくても、、ってくらい無残にボッコボコに。怖いけど頼れる。飼ってる犬もすごい。
でも結局、ディカプリオに忍び寄った子はディカプリオがかつての当たり役の時に練習して使っていた火炎放射器で自ら退治。
「努力してきた経験は裏切らないし、ピンチを救う」このメッセージが伝わってくる作品。そして、上り調子の時に出会って結婚した妻とより、ずっと昔から下火な頃も支えてくれてきたブラピとの男同士の仕事やお金の垣根がない、友情の深さも嬉しい気持ちになる。
それぞれの人生の歩みを示唆するかのように、それぞれの靴が映るのが印象的。
ディカプリオは歩んできた道にしるしをのこす踵にカッターがついたカウボーイ靴。
若手女優の子は真っ白ブーツ。
ブラピは普段はテキトーなサンダルなのに、ヒッピー相手に本気出す時だけブーツ。
ディカプリオのむさくるしい顔と、本気の時だけ繰り出す澄んだまっすぐの青い目の使い分けをこの作品でも見られる。
ブラピは誰かを男親のように支える役がよく似合うし、歳をとっても503EdwinのCMの頃と変わらずGパンが似合う。
2人とも深みのある人生なのが、作品からだけでも、彼らとはこんな無関係なところにいる私にも伝わってくる素晴らしい歳の重ね方で、どんどん魅力が増していく理想の歳の重ね方。
こんな私にも多大な影響を与える映画の作品達を、これからも牽引していってくださいという願望と、きっとこの2人が映画界にいる間は素晴らしい作品が作られ続けるという希望も合わせ持てる作品。
本来は、妊娠中の若手女優シャロンテートが狂ったヒッピーに惨殺された、シャロンテート事件、を思い起こしながら、ひしひしと迫る事件当日に向かって時系列を追って見ていく作品のようだけど、シャロンテート事件を全く知らずに見た私には、惨殺被害者としてのシャロンテートではなく、未来に希望を抱き明るく生きている若手女優としての姿が印象に残った。
映画愛に溢れたタランティーノ監督自身も、シャロンテートの最期よりも希望に満ちた歩みがフィーチャーされるように世間のイメージを塗り替えたかったんじゃなかろうか。
そして、作品内で、何の罪もないシャロンテートとお腹の子の未来を惨殺したヒッピー達をそれはそれはしっかり成敗。ハリウッドの古き良き時代が失った1人の女優生命を、現代に生きるタランティーノ監督がその立場を利用して、作品内での敵討ちと追悼。きっとシャロンテートは天国から感謝していると思う。