「Rick fuckin' Dalton」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
Rick fuckin' Dalton
まず何よりも、第一に言いたい。
子役とのやり取りが本っっっっ当に最高だった。その前後の流れも。
「生涯で一番の演技」だと、たった8年しか生きていない女の子が言うおませ感、それに素直に涙するリックがどうしようもなく好き。
良かったなあ、大人に褒められてももちろんすごく嬉しいけど、子供に褒められると混じりっけなしに褒められている気がして嬉しさ増すんじゃないの。
あとあの女の子、世界一の美少女だと思う。
タランティーノ監督の作品を観てきた人、この時代の映画やドラマを観てきた人、この時代に生きた人、思い入れと思い出のある人たちには、もうこりゃたまらん作品なんだろうな。
所々でグッとくるシーンはあったものの、私はこの映画の大半に着いて行けなかった。
勇気を出してパーティーに参加してみたものの、フロアの真ん中でテキーラ片手に盛り上がる人々を、スピーカーの側でスミノフちびちび飲みながらボーッと眺めているような感覚になる。
「あれなんかこれ私めっちゃ蚊帳の外じゃね?」と気付いてから、もう疎外感に押しつぶされそうになりながら何とか観ていた。長かった…。
ごめんなさい、監督の作品でちゃんと観たのは「ヘイトフル・エイト」だけだし「キル・ビル」は子供の頃観たはずなんだけど記憶が全然無いの。
60〜70年代は生まれてないしその頃の創作物はほとんど観てないの。
西部劇に関しては全く観てないの。
苦手な「古き良き論」じゃないといいな〜なんて思いながら、ろくに予習もせずに観に行ってしまって申し訳ない。歓迎されてなかったのかも。
リック・ダルトンとクリフ・ブース、シャロン・テートをメインに置いた群青劇のようなドラマ。
リックの自己嫌悪と自信の持ち直しに涙し、クリフの二人の友情にニンマリとし、頭の隅に常にあった不安をブチのめす展開に驚く。
散りばめられたコミカルシーンがツボにはまって、よく笑えた。
しかしどうしても乗り切れない辛さよ。
だらだらした会話劇も好きな本筋なら楽しめるのにな〜と、白目剥きそうになりながらスクリーンガン見の161分。
それぞれのストーリーや胸の内を推し量りつつも、たぶんこれはそんな普通な味わい方をするもんじゃないんだろうな〜と考えてまた不のスパイラルに。
最大のポイント、シャロン・テート事件。
冒頭から微かに感じていた不穏を、ゴリゴリに殴りつけグチャグチャに噛み砕き火炎放射でゴーゴーに焼き尽くすまさかの改変。
フィクションって凄いなと、非常に熱く感じ驚愕した。
容赦ないボコし方にテンションも上がる。
頭引っ掴んでガンガン打ち当てるやつ大好き。キュンとしちゃう。
ただ、本当に申し訳ないんだけど、正直、シャロンが襲われなかったことにがっかりしてしまった。
私の中でシャロン・テートは「マンソンファミリーに殺された人」という印象が強すぎて、女優としての活躍を全く知らなかったこともいけない。
この事件をどう描きそこからどんな展開を用意してくれているんだろうと楽しみにしていたので。
明るく楽しく生きる彼女を観ながら、でもこの後悲劇が起こるんだよなと思うことで、ホラー的感覚になって不謹慎ながら若干ゾクゾクしていたので。
悪趣味で申し訳ない。
まさか事件そのものを無かったことにするとは思わなかった。
ヒッピー襲来→シャロン死亡→巻き戻し→書き直し→リハーサル→ヒッピーボロクソ→ハッピーエンド!的なやつを勝手に期待してしまっていた。
いやちゃんと本編のあの騒動を興奮しながら観ていたけど、肩透かしを食らったような気分もあって。
この映画と私の根本が全く噛み合っていないことをひしひしと実感させられて悲しい。
同じ感覚を持てないことがひたすらに寂しい。
ただ、監督が昔の映画も今の映画も他人の映画も自分の映画も大好きなことはがっつり伝わってきた。
映像の質感も、NGを挟み込んだ劇中劇も、役者やプロデューサーとの会話も面白い。
ラストシーンの邂逅はあまりにも胸熱。
あとで人からこの映画のポイントや小ネタを少し教えてもらって、ほぉーそうなのかぁーという気持ちになった。
いくつか過去作もおすすめしてもらったので順々に観ていかないとな、と思う。
いつか何年か後にでも、タランティーノ作品を制覇してからこの作品を観たら絶対に感じ方が変わってくるはずでしょう。その時が楽しみだな。
今生きているこの時代も、何十年か後にはノスタルジックに映画として描かれるんだろうか。
どんなものがどんな人が象徴として登場するんだろう。まずはスマホかな、発展するSNSとコンテンツの多様性。タピオカなんかも入るかな、海外だったらレディーガガ、日本なら嵐かしら。
むかしむかし…と始まるタイトルだけど、妙に未来のことを考えさせられる映画だった。
昔とは比べものにならないほど選択肢が増えているこの時代。
このまま増えたとして、最初に廃れる文化はなんなんだろう。どうか映画ではありませんように。いつまでも映画館が残りますように。
私自身の未来も他人の未来も映画の未来も気になる。やっぱりあと300年くらいは生きていかないとダメだな〜。
ありがとうございます。
タランティーノの意思もちゃんと伝わってきたのに「シャロンは殺された人のイメージしかない」なんてちょっと嫌な言い方だなーと、自分で書いててちょっと反省してました笑
まあ感想は変えられないんですが…。
e.comさんのレビューに共感しますし、その案ぶっ飛んでて好きです。
どうせならこの映画の世界ごとぶち壊しても面白そうですよね笑
「悪趣味で申し訳ない」なんて思う必要全く無いですよ。映画なんですから、何でもアリOKでしょ?
俺もマジで、シャロン惨殺を鬼復讐する二人が、ついでにハリウッドも焼け野原にする夢想しました。
それで、米軍が「戦場はベトナムじゃない!ハリウッドだ!」とLAに大挙ヘリが向かう…なんてね。