「タランティーノファン、そして映画マニアに贈る最高のプレゼント」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 柴平達弥さんの映画レビュー(感想・評価)
タランティーノファン、そして映画マニアに贈る最高のプレゼント
デュニ・ヴィルヌーヴ監督、クルストファー・ノーラン監督とともに、公開されたら必ず見る監督の一人、タランティーノ監督の待望の新作であり、大傑作だ。
冒頭からクスリと笑わせ、ファンにはたまらない独特の時間軸で物語は進む。サスペンスの何たるかを分かっていながら、そこを外したり、射止めたりと、器用な編集ぶりを見せつける。
なんでもない顔のアップだけで、これだけサスペンスを高められる監督は、ヒッチコックとタランティーノだけだろう。
はっきり言って相当の映画通でないと楽しめない「映画偏差値」の高い映画。つまらないとか退屈だとか、暴力シーンが納得できないなどと言う見当違いの意見もうなずける。アル・パチーノが出てきた時に、「あっ!彼だ」と気がつかない方には申し訳ないが、楽しめない映画かも知れない。
しかし、過去に数千本の映画を見てきたファン、映画通であればあるほど、ラストシーンに向けて心臓が破裂しそうになるほど、ドキドキするはずだ。さらに、そのドキドキの最後の最後に長年映画を見てきた映画バカへの素晴らしいプレゼントをタランティーノが準備してくれる。
一部指摘されているとおり、ブルース・リーと、デニス・ホッパーの扱いはやや不当な印象も受けるが、総合的には映画愛に満ち溢れていて、時間の経つのが快適だった。
主演の3人に加え、アル・パチーノ、ダコタ・ファニング、カート・ラッセルらもいい味を出している。BGMもとてもいい。
2019年を代表する映画バカによる映画バカへの最高の贈り物。彼と同時代に生きながら、この映画を見ないなんて勿体なさすぎる!村上春樹の新刊が出たら、読むのと同じこと。
ぜひ劇場の大スクリーンでポップコーンを齧りながら楽しんでいただきたい!