「タランティーノ総決算にして鎮魂歌」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
タランティーノ総決算にして鎮魂歌
ずっと楽しみにしていたワンハリ。公開2日目に観てきました。レイトながら、客の入りは8割。長尺の映画ながら途中離席する人はゼロ。タランティーノ作品は殆ど見たものの、実はスクリーンでの鑑賞は初めてでした。
始まってまもなく1969年のハリウッドの世界に没入させられます。古き良きアメリカの街並み、ディカプリオ×ブラピの軽妙な掛け合い。ノリノリのBGMにフェチの凝縮されたカメラワーク。随所に溢れる過去作品へのオマージュ。
もうこれだけで多幸感に溢れていて、なんとゴージャスな映画なんだろうと感心してしまうほどでした。
特に注目して欲しいのがタランティーノならではの"フード描写"。
マカロニサラダ、カクテル、タバコにドラック、果てはドックフードに至るまで、どれもたまらなく魅力的に映るんですよね。ストーリーに直接関係ないこれらの描写は一度見たら脳裏にこびりつくかと思います。
現実には避けられなかった悲劇的な事件。それまでのアメリカの"空気"を一変させてしまったあの事件へのカウンターであり、タランティーノのこれまでの全ての仕事の総決算でもあるという。非常に高度にバランスのとれた映画でした。
ある意味、タランティーノによるニューシネマパラダイスと言っても過言ではないと思います。
だから映画的快楽に溢れていながらも、どこか懐かしく、後味が苦い。そんな深みのある作品に仕上がっています。
活気溢れる当時のハリウッドを、映画というマジックで永遠の物にしようとしたタランティーノ。
その思いを考えると、クライマックスのシーンには涙を禁じ得ませんでした。
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