「続編が決まってから見るんじゃなかったなあ」ザ・ファブル うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
続編が決まってから見るんじゃなかったなあ
原作のマンガがあることも知らなかったし、劇場で見た予告編も、おちゃらけた岡田准一のシーンだったので何の興味も湧かずに今までスルーしていましたが、正直なめていました。こんなド迫力のアクション。せっかくなら、予備知識なしに見たかった。
なぜなら、続編が公開予定なので、見る前から主人公が死んだりするような内容じゃないことが分かってしまっているからです。
もしも偶然これを読んで、今から見ようかどうか悩んでいる人がいるのなら、見たほうがいい。自信を持ってお勧めします。でも「岡田くん生き残れるのか?どう考えても死ぬだろう、これ」っていう修羅場をくぐり抜けていく展開なのでハラハラしながら追いかけたほうが絶対面白いと思います。だから続くことを知らずに見たほうが絶対面白かったはずなんです。
キャラクターの造形はコミックっぽいですね。強いのに猫舌とか、サブイ芸人のギャグにドはまりしているとか、そのへんのコミカル描写のさじ加減がちょうどいい感じでした。脇を固めている俳優さんたちも絶妙にバランスが良くて、たいてい一人二人くらいは雰囲気合わない人が混じっているものなんですけど、すごく自然に入り込めました。
特に柳楽優弥さんと、安田顕さんの濃厚な関係性は二人の演技力によるところが大きいと思います。
ただし気に入らない部分もありました。
ストーリー上、不自然な展開があちこちにあります。例えば男関係に絶望しているはずの清水ミサキはなぜかファブルには無警戒で近づいてくるし、あまつさえ飲みに誘っています。一般人に溶け込んで普通の生活をすることが出来ない異常者のファブルに、面倒見が良すぎます。海老原はケジメをつけるためとはいえ、かわいがっていた舎弟を処分する。どう考えても女をつぶしてしまう方が自然なのに。まあ、そうなったらファブルが黙っていないでしょうが。
清水ミサキというキャラは重要な役どころで、誰もが守ってあげたいと自然に思えるような純真さが必要です。そのせいで要領よく立ち回れないところをつけこまれてどんどん悪い方に巻き込まれていく展開は、ともすればありきたりで、女優さんの魅力に左右される部分が大です。山本美月さんは「しょわされてるなぁ」と感じました。
それから、木村文乃さんもちょっと残念でした。やはり凄味が足りないと思います。ヨーコというキャラの「普段はチャラいおネエちゃんにしか見えないけど強い」みたいな設定は無理がありすぎます。もうちょっとそれらしい人がキャスティングできなかったのか残念でした。
ファブルの下手くそなイラストが採用されるシーンや、ボス役の佐藤浩市が短いやりとりでファブルに休暇を取らせる意図を語る見事なシーンとかは原作のままなのでしょうか。後追いで原作を読んでみる気はしないので、永遠に謎のままですね。
続編には期待しています。ただし、木村文乃さんも山本美月さんも続投するみたいなので、正直見に行こうか迷ってしまいますね。でも、見てなかったことを後悔するくらいなら、見てしまったことを後悔するほうがましかな。
いや、逆かな。
2021.2.2