「この世界観に陶酔できれば楽しめる」殺る女 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
この世界観に陶酔できれば楽しめる
いかにも低予算作品で、セットや撮影環境・技量などお世辞にも褒められたものではないが、主演女優の知英(ジヨン)という存在感がそれを補って余りある。
加えて、凄腕のオンナ殺し屋という設定によるハードボイルドスタイルも、好感が持てる。なりふり構わず、この世界に浸かるべし。
知英(ジヨン)は、今年、コメディの「レオン」(2018)、青春ドラマ「私の人生なのに」(2018)と、いずれも主演で幅広い役柄のバリエーションをこなし、"元KARAのメンバー"という前置きはナンセンスなほど安定した演技力の高さを持つ。もちろん歌を歌わせれば抜群に上手い。
知英が演じるのは、幼少時に目の前で家族を惨殺されたことから、殺し屋に身をやつし、敵討ちの機会をうかがっている凄腕のオンナ殺し屋"愛子"。
映画は愛子のほかに、孤児院育ちの兄妹のストーリーが同時進行する。兄は元暴力団員の加賀俊介、妹は看護師の加賀由乃。やがて3人の運命が交錯していく。血は血を呼び、負の連鎖が続いていく。
薄暗いシーンでのライティングが厳しい。またお祭りのシーンで、"茅ヶ崎御輿"の文字が映っているのに、続くシーンが"木更津"に飛んでしまうなど、低予算ならではのロケ条件の厳しさが垣間見られる。
世界観は、いたって真剣勝負なのだけれど、やっぱりいろいろB級なんだよね。割り切って、知英様を観る映画。
意外だったのは、プロローグでアメコミ風のコマ割りアニメーションが挿入されるが、けっこうカッコいい。これは殺し屋"愛子"を描いたものだ。ところが、エンドロール後に、またアニメーションが出てくる。それがなんと数年後、"愛子"と再会する加賀俊介の"娘"なのである。ひぇー!そして、"to be continued next"(大笑)。
冗談でしょ、ウケるけどね。
(2018/10/27/ユナイテッドシネマ アクアシティお台場/ビスタ)