「SFではないけど面白かった」アルカディア つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
SFではないけど面白かった
SFとは科学に基づいた、それが実現可能かどうかは抜きにしても、最もらしい根拠があり、存在できそうだと信じるにたるものであるべきだ。と思う。
そういう意味で本作は、SFスリラーと銘打たれているものの、どちらかというともっとオカルト的な作品だった。
SFを期待していた身からすると残念な作品、ということになるだろうが、それを考えなければかなり面白いスリラー?でいいかな、であった。
全体的にはハルの言葉のように抽象的で、具体的に何が起こっているのかがわからない。場合によっては何かが起こっていることさえわからない人がいるかもしれない。
その場合はとても退屈に感じるかもしれないけれど、この手の作品は向き不向きがあるからね。
かなり序盤から、不思議な出来事や、イマイチ整合性が取れない場面などがあり、とにかくわけがわからない。
ちょっとしたおかしなことは主人公兄弟がそれらしい理由を言うが、それもなんだか正しいような正しくないような曖昧さで、観ている者を煙に巻く。
おかしな事、不思議な事が次々と起こるので、何でもないシーンにも何かあるのではないかと食い入るように見てしまう。
何度も登場する円、なぜカルトなのか、付箋の女性、絵、ビデオテープ、言葉の定義を変えること、その他色々な事を回収していくプロットも素晴らしい。
その中で冒頭のテロップにあったように、最終的には兄弟の物語に帰結するのも良かった。
徐々に意味がわかる系の作品だと種明かしの瞬間まで何も起こらず面白くないなんて事が多々あるものだが、その点本作は謎のばら蒔きが多く、またホラーのような雰囲気が非常に効果的でスリリング。面白かった。
ここからネタバレ含む
子どもの頃に書いた母親の絵は、カルト教団がループしているサークルの外にあったように見えた。
あの絵はループしているから当時のまま存在しているわけで、そうなるとカルトのループサークルより外側にもループしているサークルがあるのではないかと思う。
つまり、あの兄弟はすでにループに飲まれているのではないかと思うのだが、そうなるとループ前の記憶を保持できるらしいことと整合性が取れなくなるので、これは違うかな?
それかガソリンが尽きることで一番外側のループにこれから引っ掛かるのか?そうかもな。
エンドロールのシュワシュワした映像はそういう事かも。