「タバコとザリガニとトースト女」銃 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
タバコとザリガニとトースト女
昔、山上たつひこの漫画で銃を手に入れたおかげで仕事も出来るし、女にもモテるし、セックスも強くなった男が描かれていたことを思い出した(アフリカ象にも象徴されてた)。銃社会ではない日本だからあり得る心理変化なんだろうけど、実際に撃つわけじゃないし、撃ってみたくなるように心が動いたわけでもない。やはり銃口が男性自身のメタファーとなり、硬いことはもちろん、まるで全ての支配者になったように錯覚し、陶酔した結果なのだろう。自信のなかった者が銃のおかげで強くなる。これはこの『銃』を持った西川トオル(村上虹郎)にも当てはまっている。
銃を拾ったことところから始まったおかげで、彼のそれまでの性格はわからなかったけど、合コンに付き合ってはみるが、積極的にセックスするまでは至らなかったのではなかろうか。銃を愛おしいように丁寧に拭き上げるシーンもまさにその心理描写。愛おしい男根と同じなのだ。ただし、付き合ってみたくなる広瀬アリスに対しては積極的にならなかった点がストーリーとしてはちょっと弱いかな。
撃ってみたくなる気持ちはまた別物。いい大人だったら、仕事にも精力的になりセックスが強くなっただけで満足するはずであり、試射する衝動についてはまだ成熟しきってない経験値不足の頭からくるものだろう。親に捨てられた過去のある大学生という設定がピタリと当てはまる。また部屋の様子を見る限り、養父母が裕福な家庭であることも想像できる。バイトもしてなさそうだし、オーディオやアナログレコードの膨大な数も・・・
途中から目撃証言により、トオルのもとに刑事が訪れるが、このリリー・フランキーと村上のやりとりは見もの。どちらも一歩も引かないぞという強い意志が感じられた。
児童虐待についての社会派要素も感じられたけど、殺したいはずの隣人の母親を撃つことができなかったのも興味深い。最終的には電車の中でのロクデナシっぽい男を衝動的に撃ってしまったトオル。その直後、モノクロ映像がカラーに変化する。心理描写としてもいい具合だったし、銃を拾う前は描かれてないがカラー映像だったに違いない。
本年度、タバコ吸いすぎ映画1位獲得!
2位以下は『伊藤くん A to E』、
『愛と仮面のルール』、
『ハード・コア』・・・