「人間観察の契機に」愛がなんだ 古元素さんの映画レビュー(感想・評価)
人間観察の契機に
原作を読んでいて、自らの情けなさを本にして読んでいる気持ちになったことを覚えている。映画を観る機会があったので、覚悟を決めて観賞した。登場人物全てに思うところがたくさんあった。昔メモ書きしていたレビューから、一人ずつ挙げていきたいと思う。
まずはテルコ。ひたすら強かな女だと思った。何より最後の最後にマモちゃんと恋人になれずにマモちゃんの親友に目をつけるところ、マモちゃんが好きな動物園で働くところが最高。「もしうまく行けばマモちゃんと接点あるかも」と、最後まで成長していない。呆れた。だが共感した。私自身も同じことをしようと思い付いたからであろう。人のことは言えない。
考え方は勿論だが、見た目で分かる部分も同じく強かだ。リップの色である。ピンクがあまり合っていない。筆者が美容に関してもアンテナを張っているからこう感じるだけかもしれないが、彼女は肌の色味から赤系が似合うと思う。しかし敢えてピンクな辺り、可愛い女を演じているところが伝わった。また、これは共に観賞していた友人が言っていたのだが、「あんな感じなのにビール缶持って夜道を歩くんだね」そういうところにも本性が垣間見える。
次に仲原くん。葉子への愛がひたすらに強すぎる。だからこそ最後には、このままだと葉子を幸せにできないから会わないと決意するところが素敵。でも彼は葉子の全てではなく、「仲原くんの前の葉子」つまり葉子の表面を好きだからこそ、葉子は心動かされないのかなとも思う。(これは葉子が自分を出せない辺りに弱さを感じた。)最後の仲原くんの写真展、どんなシーンより仲原くんの写真の葉子が著しく美しい。写真というのは撮る側が被写体を如何に愛しているかが伝わる気がする。そこからも仲原くんの愛が伝わった。
そして問題の葉子。彼女こそしっかりと好きになれる人ができてほしいし、そのままの葉子を愛してくれる男の人がいたら、否、そのままの葉子を出せる人がいたらと思った。テルコへの箸の渡し方が雑な辺りに、彼女のテルコへの扱い方を示しているのか、それが素なのか迷わせるものがあった。そこからも、葉子は何よりも自分が大事で、自分の中の柔らかい部分が壊れないように、テルコなどと仲良くしてる気がした。
マモちゃんに対しては酷評しか述べられない。結局のところ、男は自分が好きな人、つまりすみれのような存在は欲しいけれど、自分を慕ってくれるテルコのような人も要るのだと痛感した。要するに「ゴミ」である。
マモちゃんがひたすらに恋い焦がれたすみれさん。ひたすらに頭が悪い。だからこそ色々考えて優柔不断なマモちゃんは好きなんだろうなとも思う。ここからマモちゃんの自分にないものを好きになって自らの欠落を補完しようとしてる、自己肯定感の低さが垣間見える。
個人的には、テルコの同僚女性への好感度が高い。色々割り切ってサバサバしてる辺りが。テルコみたいなのにも憧れる一方、「皆がテルコみたいじゃないから社会回ってる」という考え方が好きだし、そのあとテルコが社会を回すために生きてないって言うところも良かった。
今作品は、人間について色んな角度から考える契機となった。自分の考え方を改められたら良いと痛感した。