「運命論者と現実論者の対比」愛がなんだ 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)
運命論者と現実論者の対比
彼女 好き?好き?大好き?
彼 うん 好き 好き 大好き
彼女 なによりもかによりも?
彼 うん なによりもかによりも
彼女 世界全体よりもっと?
彼 うん 世界全体よりもっと
彼女 わたしが好き?
彼 うん きみが好きだ
彼女 わたしのそばにいるの 好き?
彼 うん きみのそばにいるの 好きだ
彼女 わたしを見つめるの 好き?
彼 うん きみを見つめるの 好きだ
彼女 わたしのこと おばかさんだと思う?
彼 いや きみのこと
おばかさんだなんて思わないよ
彼女 わたしのこと 魅力あると思う?
彼 うん きみのこと 魅力あると思うよ
彼女 わたしといると退屈になる?
彼 いや きみといると退屈にならないよ
(中略)
彼女 誓ってくれる?
けっしてわたしを置きざりにしないって
彼 いつまでだってけっしてきみを置きざりに
しないって誓うよ、胸のうえに十字を切るよ
そして嘘をつくくらいなら死ねたらと思うよ
(無言)
彼女 ほんとうに 好き? 好き? 大好き?
【R・D・レイン著 好き?好き?大好き?】より
愛は無償に与えるもの…
恋は虚像の崇拝…
わかってる
そんなことわかってる
でも彼を常に気に掛けていたい
だってそれがわたしなのだから…
本作『愛がなんだ』の提示されていた恋愛観…
いや、【恋愛哲学】を
つらい恋を経験した方なら、誰しも
多かれ少なかれ感じ入ることでしょうし
逆にお話を飲み込みづらい。
なんだったらまったく共感出来ない!って方も
当然いるでしょう…
岸井ゆきの さん演じるテルちゃんが
けなげに見えるか、恋愛サイコパスに見えるかで
作品の印象が変わるのと思いますし、
またそんな絶妙なバランスで見事に演じていたと
思いました。
いきなりラップ調でわめき散らしたり、
その後「そういう所、苦手」と
客観的にマモちゃんの視点に投影し急に冷めたり、
幼い頃の自分と自問自答したりと、
ドッキリさせられた表現演出は楽しめました!
作中に何度も登場した【象】とは
〈どんなほどこしも分け隔てなく受け止めるもの〉
の象徴… そんなイメージだと思いましたが
調べてみたら献身、忍耐、信頼、安定、
そして真理を象徴しているそうです。
そんなことも照らし合わせてみたら
より深く、本作を味わえるかもしれません!
成田 凌さんの煮え切らないダメ男感!
貧弱で猫背を気にしてる所が愛おしかったり!
中原っち役の若葉竜也さんは重要な役を
豊かに演じていて好感を持てました!
すみれさん役の江口のりこさんの存在感!
そこにシビれる憧れる女性像!
…今思えばわたしも若い頃は多分、
多少粘着質な恋愛体質だったかな…
「恋は盲目」なんていうけど
ヒトって醒めない夢をいつまでも
見ていたいんだよね…
夢や恋を追いかけている間は楽しいけど
袋小路にハマるときが、
いつか現実に向き合うときが
きっときてしまう…
その折り合いを付けて
わたしたちは生きている。
いつだってあるよ
夢よりも大事な物が…
悲しいけどそれが現実…
でもそんな自分も嫌いじゃない
それで十分生きていける