劇場公開日 2018年11月23日

  • 予告編を見る

「天国と地獄の人生。」エリック・クラプトン 12小節の人生 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0天国と地獄の人生。

2019年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

僕がはじめてクラプトンと出会ったのは「マネー&シガレット」だった。当然、情熱的な「レイラ」は知っていて、おまけにギターテクの評判がさきに耳に届いていたので、どれほどギュインギュインいわせるメロディー(当時はそれがかっこよかったのだ)を聞かせてくれるのかと思いきや、僕の勝手な予想に反したブルースのアルバムで、正直期待外れだったのを覚えている。今ではその渋さがたまらないが若い僕にはその良さがわからなかった。その後の、大学教授然(例えばアンプラグドのときとかの)とした風貌から、酒と女で人生を持ち崩した過去を聞かされても信じることはできなかった。それが、僕のクラプトンのイメージだった。

この映画は、様々な失敗を繰り返して、今の姿にたどり着いたクラプトンのドキュメンタリー。幼いころからの映像が多く残されているのが印象的。複雑な家庭環境ゆえの価値観から、地の底まで転げ落ちた過去を持つ。だけど、それを言い訳にして悪人になり切れないところがクラプトンなのだなあ。しっかりと起承転結で結ばれていて、転の時代でのパティとのいきさつ(つまり「レイラ」)は、もう少し泥臭く、しがみついた幸福だと思っていたので、むしろ幸せをつかみ損ねてばかりのクラプトンに、同情の気分が強まった。

ラスト、ステージ上のBBキングにあのセリフを言わせるクラプトンこそが、真のクラプトンなのだろう。その言葉を聞いてはにかむ彼は、人格者にしか見えなかった。

栗太郎