劇場公開日 2019年10月11日

  • 予告編を見る

「AIとの付き合い方を考えさせられます」アップグレード おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0AIとの付き合い方を考えさせられます

2019年12月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

公開日に地元映画館では上映がなかったので諦めていたのですが、最近になって上映されていることを知り、遅ればせながら鑑賞してきました。評判どおりおもしろい作品で、最後の最後まで楽しく鑑賞できました。近未来を描くSF作品は大好きなのですが、本作ではAIチップの存在が物語のカギとなっており、人間とAIとの付き合い方について一度立ち止まって考えてみたくなりました。

犯罪組織によって妻を殺され、自身も手足の自由を奪われた男が、AIチップを埋め込まれたことでアップグレードし、復讐へと動き出すという設定が、興味深かったです。肉体はあくまで自分のものなのですが、そのコントロールをAIが行うことで、まったく無駄のない精密機械のような動きが生み出され、復讐相手を完膚なきまでに叩きのめす場面は痛快でした。しかし、そこはそれ、機械が行うことなので、躊躇も加減もなく、目を背けたくなるシーンもありました。でも、このおかげでグレイとSTEMには、体のコントロールだけでなく、内面や思考にも大きな違いがあることが伝わってきました。そして、これが終盤への伏線にもなっていたと思います。

全体のストーリーとしては、家族の復讐劇を描きながら、その裏側にある陰謀がしだいに明らかになっていくという、よくある展開ではあります。しかし、序盤から周到に伏線を張り巡らせ、グレイの身に起きたことや、じわじわと真相に近づいていく様子を丁寧に描いているので、いつのまにか作品世界に引き込まれていきます。また、中盤あたりで黒幕の見当がつきつつも、ラストのどんでん返しと伏線回収コンボで、そういうことかと裏切られる感覚も非常に心地よかったです。なんとなく、「searchサーチ」と似たものを感じました。

ただ、物語の締め方は、自分としては別の形のほうがよかったかなという印象です。あと、演技になんの不満もないのですが、あまりよく知らない俳優ばかりで、華がないと感じてしまったのも残念なところです。とはいえ、作品としてよくできているので、オススメです。

おじゃる