「人は個々の空間で生きる孤独な生き物」ビューティフル・ボーイ MPさんの映画レビュー(感想・評価)
人は個々の空間で生きる孤独な生き物
なぜ、人は覚醒剤にはまるのか?当事者でない限り、否、当事者すら意識していないちょっとした気の緩み、好奇心、自分への甘さから、代償が大きすぎる依存へと堕ちていくプロセスを、ティモシー・シャラメがその筋肉のない、細い身体で演じている。彼の薄い胸と、小さなウエストが主人公の心理と健康状態を如実に表現していて、とても痛々しい。我々の生活の中でも、すぐそこまで迫っている覚醒剤中毒の恐怖が、若手随一の人気俳優の肉体を介して伝わって来る、これは必見の作品だと思う。そして、最愛の息子が別人に変貌していくのを、ただ見守るしかない親の視点で眺めると、何と人は個々の空間で生きる孤独な生き物であるかという厳しい現実が、胸に突き刺さる。名曲の"ビューティフル・ボーイ"がここまで皮肉めいて聞こえるなんて、思ってもみなかった。
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