「人を支えるって途方もない。」ビューティフル・ボーイ だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
人を支えるって途方もない。
字幕翻訳・松浦美奈
バイスを見てから間髪いれずに本作ビューティフルボーイを見た。
スティーブカレルとPLAN Bの2連続となったわけです、図らずも。
ドラッグ異存に苦しむ息子と、その息子とどうかかわればよいかに苦しむ父親のお話。
ニックがドラッグにはまったきっかけは非常に些細な事のようだった。
将来を嘱望される有能な少年が、引っかかった罠は、だれにでもありうることのように思えた。
父デヴィッドもマリファナもコカインもやったけどそんなにはまらなかったみたいなことを言っていたと思う。
つまりアメリカではちょっととんがってる頃には一通りドラッグをしていてるってのも珍しくないってことよね。
そういう一種の通過儀礼的な悪ふざけ?が、シャレにならなくなってしまったニックなのかな。
そういう認識で見進めました。
とにかくお父さん大変ね、ほんとごくろうさまやで…とずっと思ってました。
お父さんの再婚相手の人もいい感じの方で、彼女の立場にいて自分の産んだ子供への影響を心配してニックを遠ざけることを良しとしなかった点は、すばらしいです。そんなことなかなかできないもの。
一度や二度、というレベルではないのよね。
またか、またか!と周囲の努力が無になってゆき、協力しようとする気持ちがどんどん薄くなっていく。ま、普通の付き合いだと一度、二度当たりでフェードアウトしていくと思う。親兄弟でもそのように見放されることもある。
見放すほうを私は責められないと思ってしまうけれども。
見放さない、何度裏切られても見守る。
出来る事は本当にそれだけ、何度が5回でも10回でも、もっとでも。
その途方もなさに、私のようなものはやる前から諦めてしまうのですが、
恐らくそこを耐えて寄り添える人のうちにあるものが、愛と呼ばれるものなんだろうと思います。ここでいう愛は、持ち得る人を限定させてしまうものですが。
重いというか、大きいというか、強いというか、稀なる愛を注げる父なんだなあと思って、もうデヴィッドに手を合わせたくなりました。
私が持ち得る愛があるとすれば、もっと軽くて、小さくて、弱いものなんでしょうね。
それが悪いとも思いませんが。
ニックにたいしては、周囲の期待に応えすぎたのが、無自覚にしんどかったのかなとは思いましたがね。実話でありニックにあたる人が更生しているっぽいのが、救いではあります。
ニックを悪くゆって、遠ざける事は問題の解決には全くならないので、そうしたくないですが、そういう感情がないといえばうそになります。
そんなよくいる感じに薄情な自分を自覚しつつ、お父さん頑張れ!と思い続ける厳しい鑑賞時間でした。
映像なんかはとてもよかったです。みずみずしさのあふれる子供時代のシーンとか大好きです。
妹ちゃんのお小遣いを盗んだっぽい場面では、ニックを刺したくなりました。