劇場公開日 2018年11月30日

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「コッッ」ヘレディタリー 継承 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5コッッ

2018年11月30日
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鑑賞方法:映画館

祖母の死をきっかけに家族が崩れ堕ちていく物語。

前半はグラハム家の内情が丁寧に描写されるも、メインに据えられた母アニーの言動にグラつきがありいまいち掴めないこともしばしば。
「何かが変」であることはビンビン伝わってくるもののそれが何なのかよく分からないまま話が進み、ただ正体不明の嫌な予感がずっと側にある感覚で観ていた。

コッコッと舌を鳴らすのが癖でお菓子をムシャムシャとよく食べる少し気味の悪い娘のチャーリー。
彼女に関する衝撃的な出来事から大きく展開してきて一気に目が離せなくなる。
鈍い音と蟻の群がるどアップのカットが最高。
恐ろしさと、不謹慎だけど非常に美しく感じて鳥肌が立った。

家族それぞれの持つ暗い問題がどんどん浮き彫りになり、精神にのしかかる圧と霊障の打撃が強くなってくる。
派手な恐怖は感じられないものの、日常に侵食される気持ち悪さがたまらない。
家族を亡くした者の集いで出会ったおばちゃんジョーンの過剰な良い人感も逆にいやらしく感じた。案の定。

終盤のたたみかけがとても楽しかった。
母と息子の追いかけっこがめちゃくちゃ好き。もっと長く走ってくれたら良かったのに。
ギコギコブシャブシャッ!のインパクトも好き。
ここに来て溢れるパワー系の演出が現れたよ!とかなり興奮した。

まさかの方向に進んだラストには妙に満足感を覚えてしまった。何なんだこのハピネス感は。
結局またそこに行き着いてしまうのかと少しガッカリしつつ、突き抜けた画力と表情に何か一つ扉を開けたような気分になる。
絶望と諦めと受け入れの入り混じった表情が好き。

オカルトなのかサイコスリラーなのか、誰を信じたら良いのか、色々と惑わせられる映画だった。
家の中や出来事を模したリアルなミニチュアのように何層にも重なる話は、少しわかりにくい気もするけど面白かった。
アニーと祖母エレンの過去を掘り下げたエピソードとかも知りたい。
チラ見せさせられるエピソードと本音の一つ一つがだいぶショッキングなので半永久的に観ていられそう。

ただ、全体的に遅い進み方に若干ノリ切れなかったのも正直なところ。
内容も演出もとても好きなんだけれども。
楽しみすぎて予告はなるべく避けていたけれど、その過剰な煽り文句からくる期待のしすぎなのかも。
ずっと観ていたいくらい好きなんだけれども…。

一つ一つのカットとカメラワークに執念のようなこだわりを感じる。
すぐ横や遠くなど色々な方向から聞こえてくる音の鳴り方も秀逸。劇場で観るべき作品。

とにかく一番怖かったのが、狂ったように捲したてるアニーの顔面。
トニ・コレットのビジュアルはとことんホラーに向いていると思う。
鑑賞後、コッと舌を鳴らしてみて自分でビビってしまった。

2018.12.12 「来る」の鑑賞後に勢いで二度目。 追記

まったりした進みはそのままとはいえ、色々解釈しながら観られてとても楽しかった。ホラーは自由。

一度目に観たときからずっと気になっているのが、あのザ・白人な両親から少し中東系の血を感じるピーターが生まれるだろうかということ。
もしかしたら子供が欲しいエレンたちの差し金で…と考えている。
だからあの最悪な告白内容に至ったのでは。

フヨフヨ空中浮遊あたりでめちゃくちゃ恐ろしいのにどうしても笑いが堪えられず、終盤はほとんど笑いっぱなしの域。本当に好き。
ド深夜に観たため帰り道が非常に怖い。部屋の天井の隅が怖くて見られなかった。
なんだかんだこの映画がかなり好きなんだなと実感した。

KinA
KinAさんのコメント
2019年4月19日

チャーリーは普通に色素薄い白人系のビジュアルなのでやっぱり兄の感じは違和感ですよね。
私はエレン達に無理矢理作らされた説だと思ってます!

KinA
ヒロさんのコメント
2019年4月19日

ピーターの容姿は自分も気になりました。両親に白人二人を起用して息子を中東系っぽい容姿の人にするかなって。何か意味がありそうですね。

ヒロ