「Z世代にむけた「失われた20年」の末のゴジラでした」GODZILLA 星を喰う者 ケンイチさんの映画レビュー(感想・評価)
Z世代にむけた「失われた20年」の末のゴジラでした
このシリーズはセリフにゴタクが多い!多すぎる!
それにもうここまで来ると軍隊の規律がグダグダで、最高責任者である指揮官の立場が軽くなりすぎ!いくらなんでも軽すぎる!一般兵が指揮官とすれ違って、敬礼も挨拶もなくスルーしちゃうとかありえんでしょ。もう何なの?
とか、ツッコミ所はいくらでもありますが…でもこれもしかして名作?
3作目まで来て何度も唸らされましたよ。
1作目2作目の布石が凄く効いてます。
おお、なるほど!そういうことか!そうだったのか!の連続でした。
新しくて独自で斬新な解釈も凄い!
思わず声が出るほどの展開がこれでもかと続きました。
いくつも目があってアゴのしゃくれたキングギドラは好みではありませんが、それでも重力属性をブラックホールになぞらえるのは秀逸。破壊神ゴジラ、救済の神モスラの取り扱いも大胆すぎるアプローチ!
こんなゴジラvsキングギドラがやりたかったのか〜。
こんなマニアックなゴジラを最後まで見ちゃうような観客へのメッセージも凄い!
怪獣好きな観客が持つ矛盾?相剋?…悪い怪獣を倒せ!という気持ち、悪い怪獣よ大暴れしろ!という気持ち。怖いもの見たさ?更にカタルシスまで求めてしまう。そこに「自主的な人類絶滅主義」まで盛り込んで、怪獣好きな観客の「業」みたいなものを作品に落とし込んでるじゃん。
そして3作目まで来てハルオとゴジラを重ねるとは…どれだけ長距離のスリーポイントシュートだよ!
破滅の象徴ゴジラを突き詰めるとそこまで行き着くんだ。
更に更に!
破滅神ゴジラが人類の希望になってしまう?優しい顔のゴジラ!?
竜のアゴを裂くのはキングコングでしょ!ゴジラの原点を究極まで追求した?そこまでオマージュする?
で、結局残ったわずかな人類は昆虫人間と混血して繁栄しちゃうの?
展開が凄すぎて…。
でもまだ作品は終わらない。
あえて負け戦さを選択?神風特攻?マイゴジと真逆のオチってこと?
まだまだ終わらない?オイカリサマ?最終的にハルオとゴジラは1つになったってこと?
日本の「失われた20年」をモチーフに、バブル景気という日本の爛熟を享受できなかった世代、つまりZ世代をターゲットにするとこんな作品になっちゃうの?
求めていたものとは違うし、好みじゃない所も多いけど、これはこれで何だか凄いモノを見たような気がする。
3作品合計でおよそ4時間半。最後の畳み掛けるような怒涛の展開は、豊富に時間をかけただけあると思います。
でもさ、スナイダーカットもそうだけど、こういうのは一般的な映画フォーマットに収まりきれてないし、ちとズルいよ。そもそもゴジラ映画でここまでチビッコを切り捨てるなんて…映画作品として商業的な成功は望み薄だし、適正な評価も受けにくいんじゃないかな。
でも個人的にはこういうゴジラも認めます。