「過去のあやまちを棄ててゆけ」GODZILLA 星を喰う者 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
過去のあやまちを棄ててゆけ
大怪獣ゴジラをCGアニメ映画三部作で描くプロジェクトの最終作。
要塞都市“メカゴジラシティ”でのゴジラ迎撃に失敗し、
自分の選択が正しかったのかと迷い続けているハルオ。
そんななか、ナノメタルに侵されなかったハルオを
メトフィエスは救いの神へ民を導く英雄として祀り上げ、
その信心を利用してエクシフの御神体・ギドラを召喚。
エクシフの目指す道=繁栄の先の栄えある終焉のため、
ゴジラをギドラの贄(にえ)にしようと目論む。
……自分で書いててなんだが、なんか幾つも「?」が浮かぶ
あらすじっすね……合ってんのかなあ、これ……。
...
謎めいた行動の目的がやっと明らかになったメトフィエス。
繁栄の先には滅亡しかないと信じるエクシフの民は、ならば
宇宙の頂点に君臨する高位存在・捕食者ギドラの贄(にえ)
として最期を迎えるという『栄光の終焉』を望んでいた。
ここで言う“繁栄の先”を現実の世界に当てはめれば、
核兵器開発や環境破壊にこのまま歯止めがかからず
全人類が残らず死に絶えることに当たるのだろう。
ゴジラとギドラの対決は、怪獣バトルというより、
ハルオの内的な闘いという位置付けで描かれていた。
メトフィエスはハルオに過去のあやまちを次々と見せ続け、
ハルオは自責の念を募らせる。その重みに耐えかね何もかもを
終わらせたいという願望、終わりを受け入れる精神こそが
ギドラを不可触な存在とする力の源だったらしい。
だがマイアのよこした死の冒涜者=
生の賛美者モスラを見てハルオは心を変える。
自分や過去の人間たちが犯してきた
あやまちから逃避するだけの甘美な死を拒絶し、
未来のために生きる/死ぬことを決めたのだ。
...
最終的に、この3部作でのゴジラは、
人類の繁栄によってもたらされた原水爆・環境破壊
等の自己破壊の行き着く先に生まれた存在、人類の
繁栄≒テクノロジーをリセットするべく生まれた、
究極の自然の猛威として描かれていたのだと考える。
フツアの民は、ゴジラを天変地異と同じく、人の手
ではどうにもならない自然の存在として受け入れた。
ハルオにとっての勝ち負けはゴジラを殺せるか否かだったが、
マイアは、生きること、生命を繋ぐことこそ『勝ち』である
とし、ハルオと新しい世界で生命を繋ぐことを望んだ訳だ。
ハルオの最後の選択はけっきょく自死であったが、
それもメトフィエスの望んだ死とは異なるものだ。
滅亡をもたらした繁栄を讃え、栄えある最期を迎えるか?
滅亡をもたらした繁栄を呪い、過去として消え逝くのみか?
行き着く先は同じでも、大きな違いは、未来を残せるか否か。
過去のあやまちを背負った最後の人類として死ぬ。
新たな人類が、自分の子ども達が、過去のあやまちを
引き継ぐことの無いよう、呪いを背負ったまま死ぬ。
それがハルオの選択であり、本作のテーマだったのだろう。
...
はい、これだけ長々書いたし、本作のテーマだろうと
考えた部分にも共感はしますが、イマイチの2.5判定です。
まず、前作含めてミネア/マイアの描き分けと感情面・
ハルオとの交流をしっかり描けていないのが不満点。
そこが不十分なせいで、ハルオに思いを寄せていたのが
マイアだったという点も、ハルオと一緒に生きたい
という彼女の願いもふわっとしか伝わらないし、
何よりハルオが「未来の為に生きる/死ぬ」と
心を決める理由として薄弱に感じてしまう。
本作のテーマにもろに効いてくる部分なのに。
あと、ギドラ・モスラ参戦については……
三つ首ギドラというよりウルトラセブンの怪獣ナースが
3匹ご来場みたいな感じで微妙だが……まあ前作の
“メカゴジラシティ”よりは……うん……。
モスラもこういう語り口でいくならこういう
登場しかなかったんだろうし……うん……。
……不満点はいくつか浮かんだが、鑑賞後、
一番シンプルに頭に浮かんだ気持ちを正直に書こうか。
「頭でっかちでつまらなかった」という気持ちである。
観念的なセリフが増え始めた2作目あたりからなんとなく
「この調子じゃ3作目もあんまりエキサイティングな内容
にはならないのでは」と考えていたが、その通りだった。
そりゃエンタメ性が全てだとは僕も言わないが――
相手に自分の気持ちをしっかりと伝えたいなら、相手の
心の防御を解き、熱量とともに語ることが必要だと思う。
キャラクターや世界観へのシンパシーで防御を解き、
相手に伝わるように丁寧に言葉を重ねることが重要と思う。
だがキャラ描写は薄く、世界観は言葉での説明に頼りきり。
そこで観念的な言葉や映像の羅列ばかり使って
ご高尚なテーマをとうとうと語られただけでは
熱量は伝わらない。それでも何度も作品を観直して
噛み砕こうという熱意のある観客の方もいるかもだが、
申し訳無いけれど僕自身にはそこまでの根性はない。
文体で語るならともかく、これは映画だ。
映像言語として語って欲しい。
...
三部作すべて鑑賞したが、
ハルオ以外のキャラ描写の薄さがずっとドラマの
足を引っ張っていたと感じるし、映像ではなく語りが
主体の内容になってどんどんトーンダウンした印象。
結局1作目のラストがピークだったのかなあ。
三部作全体としては 2.5~3.0判定といったところです。
<2018.11.09鑑賞>
コメントありがとうございます♪
やっとこさ3部作見終わりましたが、当初の期待は何処へやら、不完全燃焼でしたね。
本当に、一体何を描きたかったのか…?
同じ虚淵脚本で『魔法少女まどか☆マギカ』という超傑作アニメがあって、あちらのような斬新な作品になるかと思いきや、悪い意味で頭でっかちの迷作になっちゃいましたね…(^^;
ゴジラファンとしては『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に期待するっきゃないです。
いよいよ今月末!
初日に観に行けるかまだ分かりませんが、やはり初日に見たいですね。
何てったって、今年の超待望作の一本!ゴジラですから!(^^)