「伝説」ボヘミアン・ラプソディ かぴ腹さんの映画レビュー(感想・評価)
伝説
往年のスターを映画にして成功した例を見たことがない。記録画像をつないだものは、テレビの特集番組のレベル程度にしかなっていないものがほとんどだった。あの強烈な個性をもつクイーンを、フレディ・マーキュリーを誰かが演じる?リアルタイムを知る者からすれば猿芝居にしか見えないだろう。そう思ってこの映画の存在を知ったときも観る気はさらさらなかった。
しかしこのサイトでランキング1位。そんなことがあるのだろうか?まあ、クイーンのファンでもないので下手に演じられていても気にならないだろうと思い、劇場に向かった。
トレーラーも音楽ものばかりだった。流行なのだろうか。そして21世紀フォックスのロゴがブライアン・メイのギターで現れて映画が始まった。
バンドや名曲誕生のエピソードはファンでなくても当時見聞きしたことから特別目新しいものはなく、詰め込み感があって雑にすら感じられた。
出っ歯を強調しすぎる。滑舌が悪く聞こえる。フレディはそんなことなかった。ブライアン・メイはもっと知的だった。
遅刻するのがメンバーとフレディで入れ替わり、父親とのエピソード、「マイアミ」を最後は本名で呼ぶ。そんな映画演出なんてはっきりいって邪魔だった。
だが、そんなミステイクも、フレディのボーカルが全部吹き飛ばした。
ライブの再現映像が優れていたわけでもない、役者は悪くはなかったが特別よかったわけでもない、まがい物でしかない。しかし、フレディの歌声がそれをステージに変えた。フレディの歌声は20年以上たった今でも朽ちることなく迫ってきた。彼が死んだというのは実感が湧かない。クイーンの曲は時折流れ続けている。消えた存在ではないことをあらためて実感した。こんなにも自分がクイーンの音楽を、フレディの歌声を愛していたことにはじめて気がついた。
彼らは永遠を手にした。それを知らしめた映画だった。