劇場公開日 2019年3月22日

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「大道ラブストーリーの裏に描かれる人道主義」ソローキンの見た桜 しずるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大道ラブストーリーの裏に描かれる人道主義

2019年4月3日
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史実を下敷きにした物語らしい。松山の捕虜収容所の事は初めて知った。
表の主題となるのは、日本人看護婦とロシア人将校の、国を越えた許されざる恋物語。出来すぎた王道の恋愛映画のようだが、その裏に、戦争の悲劇、国や立場を越えた人道主義への賛意が描かれている。

松山収容所のエピソードを、『善意の日本人』という美談には纏めたくない。野蛮な後進国という評価から脱却し、列強への仲間入りを必死に目指す当時の日本には、人道的国際的国家であるというアピールが必要だった。戦時に於ける日本軍の行い、現代でも根強く蔓延する排他意識や差別。『日本人』が特別『人道的』だったという話ではない。

戦争で決した勝敗は、人間の立場に上下をつける。食事や健康を保証されたとしても、敗者として管理支配され、自尊心を傷つけられる事に変わりはない。時に罵られ、侮蔑の眼差しを向けられる。一方で、身内を戦争で損ない、貧しい後進国と見下される日本人の、日に日に増える敵国人への感情は如何なるものであったろうか。映画でも、日本将校とロシア人捕虜の対立や、市民の罵声、ゆいの涙、兄の態度などにより、互いの複雑な心情が示されている。

立場を越えて愛し合った二人、共感しなが並んで煙草をふかす河野とボイスマン。
国や人種という所属を背負えば、自分自身のものだけでない損得やプライドが立ちはだかる。それらを脱ぎ捨てて、一人の人間同士として相対する時には、同じ人間、異なる個性としての、憎しみや無理解が横たわる。けれどそれを越える事も出来る、愛や尊重、思いやりがあると信じたい。強烈な主張ではないが、優しく提示される、そんなメッセージを受け取った。

筋書きは難解な所もなく、老若男女解りやすい。終盤の展開がいささかご都合主義に思えなくもないが、元より若干ファンタジーめいた物語なのだろう。イッセー尾方の演技を初めとする、コミカルな場面が場を和ませる。倉田のキャラクターは立ち位置が微妙。映像も癖があり、好き嫌いが別れるかも知れない。

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しずる