劇場公開日 2019年3月22日

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「心の中に咲く桜」ソローキンの見た桜 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5心の中に咲く桜

2019年3月23日
iPhoneアプリから投稿

こうした戦火の中にあっても優しさや愛は育まれる。
3ヶ国語で進むストーリーは、役者の表情をアップで大切に撮って、言葉だけでは分かりにくいであろう部分を補完し、更に見る側の感動も誘っているように思えた。
特に、ゆいの表情は強く、そして、その中にあっても、優しさや、当時の女性としての心の揺らぎも、よく垣間見らるため、切なさが増す。
日露戦争のさなかの物語であることもあって、明るさを抑え気味にした映像なのだと思うが、逆に演者の表情が際立ったと思う。
こうした物語はいつも切ない。
それぞれ母国を思う気持ちは異なっても、家族、そして、愛する人を思う気持ちに差はないはずだ。
きっと、ソローキンの心の中に咲いた桜は、どんな桜よりも綺麗に咲き誇っていたはずだ。
そして、散ることもなかったのではないだろうか。
日本に残ったゆいのメッセージが直接、ソローキンの元に届くことはなかった。
手紙を書くのをやめにしようと決意した時のゆいの表情も印象的だ。
死を感じたのだろうか。
それとも、生きて元気にやっているのだと信じていたのだろうか。
しかし、そうした諸々の思いは、やがて時代も、時代の大きな変化も、世代も、国も超えて、桜子や祖母や、他の皆のところに届く。
世界でも、日本でも、これ以上、世の中の分断が進まないように願うばかりだ。

ワンコ