「清水富美加ファンの未練だけ」僕の彼女は魔法使い Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
清水富美加ファンの未練だけ
日本映画は、ひとりの貴重な才能を失ってしまった。本作は千眼美子(せんげんよしこ)こと、清水富美加主演による、"幸福の科学"の宣教映画である。
"文春砲"によると、息子と結婚させるために芸能界を引退・出家させたというが、真偽のほどは"神のみぞ知る"…。
個人の信教の自由をとやかく言うことはできないが、仕事を途中で放り出させたことは、少なからず問題がある。
とはいえ、清水富美加の見たさだけに、こうして映画を観る人間がいるという事実は、まんまと思うつぼだったりする。
昨年10月のアニメ作品「宇宙の法-黎明編-」が2週連続1位という快挙を記録した観客動員力には驚いたが、「プリキュア」や「アンパンマン」を、大人1人で観に行くより勇気がいる。ある種の"お布施"感は否定できない。
一方で、"仏教"や"キリスト教"のように1000年単位の歴史を経ると、平気になってしまう。中国本土でのリメイク大作がシリーズ化している「西遊記」はもろ仏教だ。キリスト教に至っては枚挙にいとまがない。
2017年のアカデミー賞2冠を受賞した「ハクソー・リッジ」は、敬虔なキリスト教信徒だった青年が、聖書の教えを守り、銃を持たず、沖縄戦で衛生兵として多くの人命を救った話である。これを取り立てて、"宣教映画"とは言わない。
そういう観点でいうと、本作は"宣教"的なことはまったくない。科学的(=合理的)に、まっとうなことを"教え"としているんだろうな・・・ということだけは分かる。
ただ結論からいうと、清水富美加主演でなければ、ただの低予算B級映画である。"黒の魔法使い"と"白の魔法使い"の戦いといった設定は、"ハリー・ポッター"シリーズ的であり、プロット自体はオーソドックスで、意外と悪くない。
これが清水富美加の演技かというと、ぜんぜん引き出せていない。彼女はこれでいいのだろうか。
魔法の話なのでVFXにもっと物量投下できたら、と思うとやはり限界を感じる。”自費出版”の贅沢バージョンみたいな事業である。興行的に儲けようとしていないのだから、文句をいっても仕方あるまい。
とにかく継続的に映画を作り続ける姿勢だけは頭が下がる。
(2019/2/27/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)