劇場公開日 2019年5月17日

「面白い世界観と普遍的概念」うちの執事が言うことには R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5面白い世界観と普遍的概念

2024年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

しばらく前に流行った「謎解きはディナーのあとで」と同じような世界観で描かれるヒューマンドラマ。
一般的ではない世界に住む人々という設定が興味を引く。
この作品はプロットが秀逸で、一見謎解きゲームのようではあるが、新しい当主と新しい執事の成長の物語となっている。
絵画に仕込んだ大どんでん返しは見事で、一つの絵画に秘められた経緯と関係者、その謎を解くにあたり執事の視点と主人公の視点の両方から迫っていく構図は特に素晴らしい。
また、事件を起こした犯人の動機がしっかりしている。
この動機が誕生日パーティでのあいさつの違和感を消し去ってくれる。
主人公がそのパーティ参加を決めた理由も明確だし、執事がその理由を尋ねるという手法も自然でいい。
そのパーティで起きた事件 主催者の犯行という設定は少し大胆だが、赤目が烏丸家に入り込む口実になったのは確かだ。これは誰にとってもハプニングだったが、赤目とリサのカップルはこの時犯行を決めたのだろう。
物語自体をとてもわかりやすくしているのは、見る対象を義務教育者と高校生だからだろうか?
それ故主人公は犯人を断罪したりはしない。赦しを与えるのだ。
これは当主であっても、家族であっても、学校でも、会社でも同じだろう。
特質すべき点は、当主は当主として自分自身の何が未熟なのかを知ろうとし、執事は執事として自分自身の何が未熟なのかを理解しようと努める姿勢がしっかりと描かれていることだろう。
紆余曲折あっても、お互いにわかりあい、許しあう。
このことだけを描くために事件を起こし、疑心暗鬼を作り、葛藤させ、理解し、許す。
この工程を明確に、丁寧に描いている。
見てほしい対象者を確定し、彼らに合わせたわかりやすさと普遍的で大切なことを伝えようとしている良い作品だった。

R41