「泣くな、アーノルド。弾けーー!」オーケストラ・クラス bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
泣くな、アーノルド。弾けーー!
移民・人種問題に対するフランス人の「一つの答」が、これだと思う。
ザ・スクエアは、移民の受け入れに寛容な心やさしき政治家・文化人に「俺はオマエラの本心を知っている。言い当ててやるよ。ほれ、猿男!」と言う映画だった。迷惑になれば、害悪を為す事態になれば排除するんだろうと、スウェーデン人のオストルンドは指摘した。間違えじゃ無いんだろうが、嫌なヤツ!
「肌の色も宗教も関係無い。最後は皆んなフランス人になってしまえば良いだけの事」。これがフランスの一つの答。らしいよね。
パリ19区にある小学校の音楽クラスに派遣されたバイオリン奏者と子供達が、音楽を媒介に心を通じさせ、共に成長する姿を描いた、有り触れた様式美の古典的ストーリー。なんだけどね。
ダウドが初めてクラスを訪れた時の子供達が酷い。人種のルツボ。ゲスな言葉の応酬。手も出ます。バラバラです。音楽?バイオリン?アンタ達、正気?
1人の脱落者も出したく無い、未熟な子こそ救いたい。理想を語る教師。やる気の無い者は排除すべきと言うダウド。象徴的な対比です。
物語はダウドやアーノルドの家庭問題などをエピソードに肉付けし、ラストの演奏会に向かって盛り上がります。
古い倉庫を練習場に改装した後、子供と親達とダウドはレストランで食事をします。またぞろ、下世話な罵り合いの言葉が、子供達のテーブルでは飛び交いますが、以前とは何かが違います。汚い言葉の投げ合いを、ともに笑いながら楽しめる間柄になった様子。フランス人だね、これ。親テーブルでも同じ様なことが起きていました。
おそらく、ここが主題を象徴する場面だと思う。
最後の演奏会シーンは、露骨に泣かしに来ますが、そこは大人の事情って事で。
早朝の屋上で泣きベソかきながらバイオリンを練習するアブが良い。だが思う。「なんなんだ、この天才子役軍団は?」どいつもこいつも役者感があって、それに驚きました。