劇場公開日 2019年2月1日

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「最高の池井戸ワールド」七つの会議 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0最高の池井戸ワールド

2020年8月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

原作未読です。
池井戸原作のドラマ・映画は多少観たことがあります。「半沢直樹」「花咲舞が黙ってない」が好きでした。映画版は観ていませんが、「空飛ぶタイヤ」は原作を読みました。非常に面白かったです。

池井戸先生の作品は実写に向いているのか、ドラマ化・映画化されている作品が多くてどれも面白いですね。

この映画も本当に面白かったです。企業の闇の部分や、それに立ち向かう会社員の戦いを描いた作品です。他の池井戸作品で言えば「半沢直樹」に近い作品のように感じましたので、ドラマ「半沢直樹」が好きな人には是非観てもらいたい映画です。

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中堅電機メーカーの営業1課に勤める八角民夫(野村萬斎)は万年係長のぐうたら社員。精鋭揃いの営業1課の中では浮いた存在であった。彼の残念な働きぶりによって、八角は上司である営業課長の坂戸(片岡愛之助)から厳しい叱責を受けたのだが、八角はこれをパワハラとして上司に報告して社内で問題となり、坂戸には異動命令が下された。何故ぐうたら社員の八角が精鋭揃いの営業1課に在籍し続けられるのか、会社上層部は何故八角を特別扱いするのか。異動になった坂戸に代わって新しく営業1課の課長となった原島(及川光博)が、八角に隠された秘密を暴いていく……。
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まず驚いたのは役者陣の顔ぶれと配役。
物語のキーマンとなる八角民夫役に野村萬斎。それに片岡愛之助・及川光博・香川照之などの「半沢直樹」でもお馴染みの役者が並び、更に志賀丈史・世良公則・北大路欣也などの重鎮も顔を揃える。ベテラン&実力派俳優で固めたのかと思いきや、そこそこ台詞量もある役柄でお笑い芸人オリエンタルラジオの藤森慎吾や落語家の春風亭昇太など、役者以外のキャストの起用も目立ちます。
ベテランの配役は言わずもがな、役者が本業でないはずの藤森さんや昇太さんの演技が本当に見事で、他の役者さんが演じるのが想像できないくらいぴったりのキャスティング。
役者陣の演技に関しては完璧と言えるくらいのクオリティでした。

そしてストーリー。
「八角民夫」という男を調べていくうちに見えてくる、大きな疑惑と闇。一人の男を調べていたはずが、いつの間にか企業で行われていた巨大な陰謀が暴かれていくというストーリーが実に見事で、動きの少ない会話シーンの多い映画にも関わらず中だるみも全く無く、最初から最後まで駆け抜けるように鑑賞することができました。
これは池井戸作品の素晴らしい点です。ストーリーの風呂敷を広げるのが本当に上手で、序盤から終盤にかけて、思いもよらない大きな陰謀や企業の闇が暴かれていく展開が素晴らしいです。

最後に、キャラクターが本当に素晴らしかった。
キャラクター達が映画を通じて成長していきます。今まで企業の傀儡として言われるがままだった者が自分の正義を貫くために反旗を翻す、嫌なことから逃げるのをやめて立ち向かう、何か一つでも「後に残る仕事」をする。
主要キャラクター達が自分の中にある「正義」を信じて邁進する一方で、「敵役」として描かれるキャラクター達は、現状に甘んじて変化を嫌い、目先の利益のために姑息な手法を取る様子が対比的に描かれます。これによって、キャラクター達の魅力がより際立っています。
大企業から見れば小さな存在である末端の会社員たちによるジャイアントキリング。池井戸作品の醍醐味が今作でも存分に発揮されていました。

他の方のレビューを見ていると、キャスティングに歌舞伎役者や狂言師がいるからか、ややオーバーな演技やアクションが多く、そこが好みが別れているような気がします。
私はその演技があるからこそ、普通の演技では地味になるであろう「会議」を題材にしてここまでスリリングな作品が出来上がっているのだと思いますのでむしろ高評価ポイントです。

「半沢直樹」「空とぶタイヤ」などの作品が好きな方には刺さる作品だと思います。
オススメです!!

といぼ:レビューが長い人