「正しい?大人のケンカの仕方!」七つの会議 野々原 ポコタさんの映画レビュー(感想・評価)
正しい?大人のケンカの仕方!
社内において仕事のことで“自分の意志を通す”ために
同僚や上司に掛け合い、ディスカッションすることは
まま、ありましょう。
ですが会社そのものに、一介の社員が異議申し立てを
するなど到底あり得ないでしょう…
もし会社を相手取ってケンカを挑もうとするのならば
それ相応の“覚悟と意志”をもって
自分を貫くしかありません。
「一か八か」の大きなケンカ…
退職、罰則も顧みない行動の〈その真意〉は
そんなリスクを犯してまでするような
〈崇高な意義〉を帯びているのだろうか?
…と、ふつうのヒトならそんな考えを巡らせ
思い留まるでしょう…
〈意志を貫く〉行為は、はたから見たら単なる
〈わがまま〉 に見えるかも知れません。
また自分自身も途中から
〈意志〉なのか〈意地〉なのか分からなくなる
確信が揺らぐこともよくあるものです。
「一片の淀みなく、己が道を貫く…
簡単なようで、何と難しい事よ…」
わたしは思います。
結果、〈意地〉でもいいじゃないか。
逆の波風を、その帆に受けつつも
わずかながらでも、前進しているのであれば、…と。
「人間は失敗を繰り返す生き物である。
だが失敗を無くすことが出来るのも
また人間という生き物である。」
やれ【コンプライアンス】がどうの
やれ【ハラスメント】だのという文言が飛び交い
目に耳にしない日がないぐらい昨今の日常…
本作『七つの会議』を視聴し、メッセージを受け取った
わたしたちだけでも、せめて
【公正明大】でいたいものですね…
展開のテンポもよく、ストーリーに引き込まれました!
さて本作の評価が別れるであろうポイント、
俳優陣の“演技の大きさ”を許容できるか?
だと思いますが
それを〈エンターテイメント〉と取るか
〈メッセージ性の強さ〉と取るかの
差異なんでしょうね。
あと、一連のTBSが手掛ける池井戸 潤シリーズの
常連キャストを〈マンネリ〉と思う方もいらっしゃる
と思いますが、福澤監督のイメージと表現
そしてメッセージを過不足なく鑑賞者に伝えるための
ものだと、わたしは認識しております。
クセのある演技がクセになる!!
※追記です!
タイトル『独白』
本作『七つの会議』の最後、エンドロールと共に
八角が淡々と今回の事の顛末と、現代社会に対しての
諦観を独り語る〈 独白 〉のシーン…
現代の企業に従事しているサラリーマンを
武家社会の侍に例えた、八角のこのモノローグこそ
本作が最も描きたかった “ 主題 ” であろう。
この〈 独白 〉のシーンは映画オリジナル!
池井戸 潤 著書の原作では語られなかった部分。
このシーンを新たに付け足したことで
さらに物語の奥行きを出すことと
鑑賞者に考えさせる余地と余韻を
上手く引き出すことに成功しているなと思いました。
あと、やはり注目なのは様々な表現畑から集まった
堂々たるキャスト陣、表現者たち共演の宴!
落語家、歌舞伎、お笑い芸人、そして狂言師…
そんな彼らが織り成す〈化学反応〉を
観れたわたしは幸せ者です!
あのぐらい大きな演技だったからこそ
このテーマを伝えることが出来たのだと思いました。
福澤監督の次回作もまた、池井戸作品だそうなので
この路線を維持しつつ、新しい試みにも挑戦して
下さるよう期待しています!
2019/02/18 劇場にて鑑賞