かぞくわりのレビュー・感想・評価
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ほんとうにイカレている。
「かぞくわり」というタイトルが「家族を割る」に通じていて、現代における家族の離散と再生を描いている、というのも決して間違ってはいないと思うのだが、公開されているあらすじからして、なにかがおかしいのだ。おそらく理解できないから検索してみて欲しい。 画家になる夢をあきらめたニートのヒロイン、反抗期の子供を連れて出戻ってきた反りの合わない妹、明るく振る舞っているが甲斐性のない父と、妙なマルチにハマっている母親。もう絵に描いたようなしくじり一家が主人公というところまではわかる。 しかし、主人公は伝説の姫の生まれ変わりで、その秘密を知る謎のテロ集団が出て来るあたりで「今、何観てるんだっけ?」と何度も自問自答することになる。シリアスとコメディ、現実とファンタジー、相反する要素が溶け合うのではなく、ゴツゴツと生煮えのまま鍋ごとひっくり返したような見たことのないカオス。監督の意図はわからないが、もはや“斬新”としか言いようがない怪作だった。
奈良はやっぱり特別な場所
奈良県出身の監督が、奈良を舞台に家族とはを描いた本作。 ラッキーな事に、監督&プロデューサーさんのお二人から本作の鑑賞前に少し歴史についてお話を聞く事ができた。恥ずかしながら、本作に出てくる山の名前や、寺の名前、大津皇子、中将姫などサッパリチンプンカンプンの私にはそのお話があったから、割とすんなり鑑賞する事ができた。 そもそも、無知識で映画を観ているだけでは、頭の整理が追いつかないくらい歴史は深い。知識があるかないかで、登場人物の設定や、なぜこうなったのかなど理解のスピードは違うように思う。 作品はファンタジー要素、コメディ要素、ヒューマンドラマ要素など様々な要素を含む。 正直、ファンタジー部分や、テロ組織の目論見部分はツッコミどころも多々あったが、なぜそのような事を考えたのか。監督とプロデューサーの伝えたいメッセージがなんだったのかを鑑賞後に聴くとすんなり理解できた。 "かぞくわり" 現代社会で聞いたことのある言葉だが、私はこれを、"家族の役割"だと理解した。 登場する家族は、今の世の中にあるあるな家族。 父は仕事を理由に育児放棄。母は子育てに1人で苦しみいつしかマルチ商法にひっかかる。長女はそもそも中将姫の生まれ変わりというファンタジーの世界をバックに背負い、家族から腫れ物のように扱われ、結果、家族や社会に深く関わることを諦めた。妹は、世の中お金!精神で育つも、結局離婚騒動で突如帰省&娘に愛想を尽かされている。 結局、この四人は家族をやり直すことに成功したのだが、家族の絆を取り戻すためにはお互いの信頼と愛情以外無いのだと思う。 奈良の美しい景色がふんだんに使われていて、観ているこちらに癒しをくれる。 作品のメッセージとして、人々が便利なものを持たなかった時代、人間はもっともっとこういった自然を大切に思い、感謝して、地に足をつけて生きていたことを感じた。 本当に大切なものは何か。 どんな世の中を人は幸せだと思うのか。 1400年も昔に人々はそんなことを考え、幸せで豊かな国づくりを目指していたのだなぁ。 小日向さんや、竹下さんの絶妙なコミカルな演技は最高に面白かったし、テンポも良かった。ちょいちょい笑えるシーンがあるのは、監督が関西出身だからか。 ただただ、重いシーンであっても、くすっと笑えるところがこの映画の魅力でもある。
ファンタジーを実写でやろうとすると、どうしても安っぽくコミカルにな...
ファンタジーを実写でやろうとすると、どうしても安っぽくコミカルになってしまう。家族がテーマとも思えない。奈良のお寺と観光の宣伝?
かぞくわり
歴史が苦手だからとっつきにくいと思ったけど、我が家に似た家族のお話だった。 あまり知らない奈良の風景が綺麗。 家族がそれぞれ相手を思いやることの大切さを再確認した。 想像力を働かせながら観る、深い映画だと思う。
どうしたいのだろうね。
久しぶりに、意味の分からない、時空を越えた、まさしくぶっ飛んだ映画を観ました。製作側の意図が分からない(泣) 役者さんは、素晴らしいので、見る価値あり。
古代と現代を行ったり来たり
折口信夫、役行者、大津皇子、中将姫、當麻寺、二上山、大神神社…。こうしたキーワードが立て続けに並んでいる映画なら、観ないわけにはいかない、という思いで劇場に駆けつけました。作品は、現代社会に適合して生きられないアラフォー女性が、実は古代に生きた伝説の姫の生まれ変わりである、というところから物語は始まります。その女性を取り巻く家族は、それぞれ心の闇と歪みを持っていて…。 決して派手であったり、わかりやすい単純な映画ではありませんが、奈良の奥深さを感じる映画です。
どうしたなにがしたいのか
エンドロールで多くの方々の協力がわかりました。でもそれと中身の虚ろさは無関係。父 ~小日向さんの熱演が嬉しいが、辛い~ の謝罪と張り手でつながる割れた家族の絆ですか? 洞窟の奴等 ~高津皇子の仲間? 部下? ~ も、年とらない住職 ~神?~ も、謎。というか、虚ろ。
泣いてしまいます。
観る前に想像していた、ただの家族の映画ではなく深みがありますね。見所が満載で、こんな役するの?っていうぐらい竹下景子さんが面白い。長女の香奈の表情が前半と後半でまるで別人。また、私は父親なので、やはり父親目線で小日向文世さんを観て泣いてしまいました。(20日と27日の2回観ました)
東京から出戻りの次女と思春期の姪、長女、父親、母親のそれぞれの目線で楽しめると思いますよ。そこに歴史ファンタジーが絡んでくる。
二上山、どんづる峯、当麻寺、明日香村の棚田、三輪山、ベットタウンの家並み等、奈良の風景が綺麗なのか異様なのか、圧倒されました。絵も洞窟とマッチしていていい感じ。
1回観ただけでは時空を越えて話が進んでいく感じが、今はどっちなんだろう?と分からない部分がありましたが、2回観て理解が深まりました。
せっかくの奈良が
その綺麗さよりド辺鄙な印象しか見えないのは、塩崎監督の金魚の前作にも感じたところ。学校やお寺、駅、自分にとって馴染みの場所がもったいない。確かに俳優さんたちは頑張っているし、うまいと思った部分もある。なのに、本当にキャラクターに引き付けられないのは、世界観が練られていないのでは? あら探しなどしたくないのに「これで、家族の在り方?」と感じてしまった。さらにヒッピーたちの稚拙なテロもどき。比較してはいけないが「ファイトクラブ」ぐらいのハッタリが欲しい。「停電って、テレビカメラは自家発電? 洞窟内の電灯や持参したウォシュレットも? あと、車の一台も走らない闇? そんな簡単に長時間真っ暗にはならんでしょ?」「続く停電に、警察に文句を垂れつつ? のんきに夏祭りのごとく避難する、パニックになりそうでならない一般民衆が(主人公家族と対比するためかもしれないが)ウソ臭くて。」
なんだかんだ言って、香奈とキヅキは可愛いので、プラス1点。内容は0.5点。「死者の書」というより映画「帝都物語」だったな!
日本の原風景の中で、かぞくを考える秀作
「日本」という国がはじまった奈良の地。奈良にはたくさんの伝説とロマンが語り継がれる。そのひとつに葛城・二上山にある大津皇子と中将姫伝説がある。折口信夫はそれを小説「死者の書」で描いた。当麻寺に今も残る国宝・当麻曼荼羅の世界である。
その「死者の書」のストーリーをベースに、現代の家族のあり方を問う、塩崎祥平監督渾身の新作が「かぞくわり」。塩崎監督自身が語っている「日本の原点、奈良で核家族した現代日本の家庭のことを考えたかった。奈良だからこそ、家族のあり方を見つめ直す機会を全国のみなさんと共有出来ると思っている」という映画への思いそのものが、美しい映像とともに観る者の心を動かす。中将姫伝説の幻想と堂下家のややこしい日常生活が微妙に交錯しながら、ストーリーは展開し、それぞれの立場で「かぞく」の絆に気づかせてくれる秀作である。
この映画、いろんな見所があるが、なによりも大津皇子が祀られる二上山の夕焼けが美しい。心に溶け込む日本の原風景と言っていいだろう。
それから陽月華さん演じるヒロイン香奈の母親役、竹下景子さんの好演ぶりは必見に値する。実際、この映画で親子共演を果たした竹下さんの息子関口まなとさんが、「母がこんな役をやるのは初めてで、それだけに母も凄くおもしろがって張り切ってやってました」と語っていた。いままでのイメージを打ち破る夫役の小日向文世さんとの夫婦のやりとりは抱腹絶頂である。竹下景子ファンは見逃すと損する・・・。
初主役の陽月華さんの妖艶な表情、それとサブヒロインともいえる木下彩音さんのなんとも言えぬ可愛らしさときらめきも心に残った。
特筆しておくこともある。劇中に流れる笛の音だ。去る8月に亡くなった能楽笛方藤田流11世宗家藤田六郎兵衛さんの最後の舞台での吹奏の笛。病の中、命を削って奏でられた、鬼気迫る音色に鳥肌が立った。
いろんな意味で興味深く、楽しませてくれる中で、「かぞく」についてあらためて考えてしまう映画である。
ほんわか
歴史上の人物と現代の人物とをオーバーラップさせながら、家族の温かさ、大切さを再認識させていく。実にほのぼのとした映画である。出演者が心情をたくみに表現しており、観客の心をとらえていく。派手さはないが、実によく練られている映画である。
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