「バカな娘ほどかわいい」沈黙、愛 とえさんの映画レビュー(感想・評価)
バカな娘ほどかわいい
人間の、愚かさ、哀しさ、虚しさ、愛、その全てがギュッと詰まった作品で、最後は涙が止まらなかった
有名歌手との再婚を控えた超大手グループ企業テサングループの会長イム・テサン(チェ・ミンシク)だったが、その再婚相手が殺されるという事故が起きてしまう
しかも、その事件の容疑者として逮捕されたのは、実娘のミラだった
犯行当時は泥酔していて全く記憶がないというミラのために、会長はチェ・ヘジュンという若い女性の弁護士(パク・シネ)を雇うのだが…
韓国で起きている財閥一家の不祥事は、日本でもよく報道されているけれど
「私の言うことが聞けないなら、飛行機を引き返せ!」
なんて発言がどうして出てくるのか理解できず、単純に住む世界が違うんだなと思うことにして、韓国ドラマの中で起きている理不尽な人間関係はリアルなんだなと思ったりもする
この映画は、そんな「財閥一家の危機管理」を描いた作品である
父親は、娘のことをワガママなバカ娘と知りながら放置し、その結果、その娘が殺人事件の容疑者として逮捕されてしまう
しかし、そんなバカ娘であっても、父親にとっては、世界で1人だけの愛する娘なのである
きっと、ナッツリターンの家族も娘が世間から嫌われていようが放置し、ワガママ放題させた結果、あの事件が起きたんだろうなと、この映画を観ながら思った
その結果、会長はあらゆる財力を使って、娘を無罪にしようとする
この、父親の娘を思う気持ちには思わず泣いてしまった
小市民からすれば、財閥ファミリーの気持ちなんて1ミリも理解できないと思っていたけれど、彼らもやはり人の子で、温かい血が流れ、誰よりも家族を愛しているのだ
バカな子ほどかわいい
という言葉は真実であり、これまでの人生をかけて築いた財力の全てを失っても、父親は娘を助けようとする
そこに、人間の愚かさや虚しさを感じた
人は一体、何のために必死になって働いているのか
必死になって汗水流して築いたものを、家族の不祥事で全て失ってもいいのか
会長は、これまで散々金を使って買収し、財力を築いてきたけれど、
最後に頼りにするのは、
金で買収できない検事と弁護士だというのは、なんとも皮肉な話だと思った
それにしても、父が最後に船を見送る姿はあまりにも哀れで涙が止まらなかった
「沈黙」の中で全てを語るチェ・ミンシクは本当にすごい俳優だなと思った