「詩的な美しさのあるゾンビ映画」カーゴ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
詩的な美しさのあるゾンビ映画
ゾンビ映画だが、ゾンビとの闘いが中心の作品ではない。人間同士の争いも描かれるが、それも話の中心というわけではない。ゾンビにかまれた男性が幼い赤ん坊のために、何ができるかを限られた時間で探し求め旅をする。荒涼としたオーストラリアの大地で、男は幾人かの人間と出会い、赤ん坊を安全を願う。アボリジニの少女との出会いが福音的に描かれるのが印象的だ。そしてそこには先住民族に対する白人の贖罪意識ものぞかせる。やや抽象的だが「魂の旅」のようなものを描いた作品だ。
ゾンビにかまれるとゾンビ化するのはお馴染みの設定だが、本作では約48時間の猶予があるのがユニークだ。その残されたわずかな時間で、残された家族に何ができるのかを本作は問う。派手なアクションはなく、淡々と物語は進むのだが、タイムリミットの導入が作品にスリルを与えている。泣けるゾンビ映画も珍しくなくなってきたが、本作も秀逸。ゾンビのいる日常とはどういうものかというシミュレーションとしても面白い。
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