劇場公開日 2020年2月29日

「リアルすぎて解りにくいので2度見推奨」劇場版 SHIROBAKO Geso_de_Nyoroさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0リアルすぎて解りにくいので2度見推奨

2020年3月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

幸せ

P.A.Works お仕事シリーズ『花咲くいろは』に次ぐ2作目。制作者自身の業界、アニメ制作の根の暗い部分にスポットを当てつつ、必死にジタバタするミヤーモリとその仲間たちの悲喜交々をマニアックに綴るお話です。
業界ネタも交えて身内を描写する訳ですから、その細部がリアル過ぎるコマケー仕上がりです。但しソレが災いしたのか、1回見ただけでは何だかモヤッとした感触で、何とも言えない気分だったので、10日後に料金が割引になる日を選んで再鑑賞しました。

業界のイヤーな部分を描写したドキュメンタリー。直接描写がイロイロマズい場合はヘンテコな演出を用いてボカす手法も活かされています。前半の“低空飛行”状態のムサニの様相は『け◯◯レ』『W◯G!』のソレを彷彿させてて、その辺の業界事情は監督自身には経験お有りなのでしょうか?
作品としては一例でアニメ業界を描いたに過ぎず、社会には形こそ違えど似た様な事情や特有に存在する世知辛いブラックな面々があるのはご承知の通り。特に、好きな事やって金がもらえる〜のクダリは、周囲の無理解という寂しさと虚無感にはミゾオチに痛みが走ります。
そんな理不尽に冷水を浴びせられつつも、周囲に励まされ根性を据え逆境に立ち向かっていく様は、世間で働く色んな業界業種の人達に共感されそうな気がします。

ですが今作は、後半が若干微妙でした。
ミュージカル風に仕立てられた宮森の自信と決断、そこから以降の展開はトントン拍子で、前半のモヤモヤとは打って変わってのハツラツぶりは水を得た魚です。過酷で困難な仕事を抱える覚悟のワリにはジタバタがあまりなく、唯一の困難は契約問題だけ。
メンツ集めも交渉快諾、寧ろ能動的に馴染みの顔ぶれが集まり、それはTV版からのファンは喜んでいい部分です。とは言えTV版の様な万策尽きる描写はなく、その事情を補足するのが過去の制作中止問題で蔵に収納された案件の掘り起こしなのでしょう。
その扱いが少々淡白描写だったために、制作順調な根拠と云う裏打ちには些か不足に感じました。冒頭でこの事故を深刻に印象づけていれば、チョッと違った受け方になったかも知れません。

とは言えお仕事アニメとしての出来はマズマズで、アニメ業界に詳しくない人でも業界を紹介する内容としては普通に楽しめると思います。少々「岩浪サン」贔屓な気がしたのは自分だけでしょうか? 今作は監督自身が音響も手掛けてるみたいですが‥‥
庵野監督がチラ出した理由は不明です。

Geso_de_Nyoro