「一緒にトリップしてしまう倒錯感たっぷり」2重螺旋の恋人 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
一緒にトリップしてしまう倒錯感たっぷり
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国際映画祭常連のフランソワ・オゾンの新作であり、第70回カンヌ国際映画祭コンペティション選出作品。セックスシーンの多い官能スリラーサスペンス、R18+(成人指定)である。
謎の腹痛に襲われる女性患者クロエが、カウンセリングを受けた精神科医ポールと恋におちる。ところがそのポールには同じ精神科医で瓜二つの双子の兄弟ルイがいた。
正反対の性格の双子と、禁断の肉体関係にのめり込んでいく主人公クロエの心理状態をスリリングに描いている。"現実"と"夢"の世界、"愛情"と"妄想"が倒錯し、クロエは自分が何者なのかに混乱していく。
瓜二つの双子ポールとルイ2役をジェレミー・レニエが演じ、主人公クロエをマリーヌ・バクトが務める。いずれもオゾン作品に出演したことがあり、再タッグである。
全編を通して画質が極上。美しい映像と上品な質感はさすがオゾンである。
"なにが真実か"、クロエ自身とともに観客も最後まで混乱させられる。原作とは変えたという最後のオチは少し理屈っぽくて、そこに至るまでの官能的な流れとは異質に感じる。
ただ単なる"夢オチ"かと思いきや、どこまでが"夢"や"妄想"で、どこからが"現実"なのか、結局わからないまま。あまりアタマで考えないほうがいいかも。映画的なテクニックによる倒錯感に巻き込まれ、一緒にトリップしている自分がいる。
(2018/8/7/ヒューマントラストシネマ有楽町/シネスコ/字幕:松浦美奈)
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