国家主義の誘惑のレビュー・感想・評価
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相対性
ジジババばかりの観客で、2人の中学生とおぼしき男の子が観ていたのは印象的である。まぁそれにしてもこういう作品を一番観て欲しい層が、一番観たくない作品のトップなんだろうし、実際、内容も勧善懲悪、ハリウッド的カタルシスなど微塵もない、救いもかといってバッドエンドもない、或る角度からのドキュメンタリーだから、こういう内容をどうやって届けることができるのかを、もっと両翼は試行錯誤した方がよいと思う。エラーを恐れずに、やってみて欲しい。
まぁ、結局どっちに付くの?という話に始終してしまうのだが、TBS&毎日新聞が噛んでる分、今作品はリベラル寄りアプローチ作品であるので、一応、バランスは考えているのだろうが印象は“レフト”なんだろうね。
なので構成は、今までの教科書及び自分が学生時に聞き囓った内容に近似している。もう少し詳しくは解説しているのでそのところは勉強になった。フランスのEテレっていうイメージの構成。なのでフランス知識人が登場するのだが、そもそも西洋社会のアジア人に対する『属する世界が違う』差別感から始まるストーリーテリングをフランス人に語らせるのは、狙ってるのか皮肉なのか、どうにも理解困難なのは自分だけだろうか。
明治維新、日清日露、そして1次2次の世界大戦を歴史的に紐解きながら、現在の日本のきな臭さは、正に元来た道を進んでいる状況であるという解説。保守かリベラルかというより、“安倍”か“反安倍”かの対立軸だとは感じるけど、もし、解説のように『ガス抜きがコントロールできなくなる』なんていう、ディストピアのキーワードを実際、永田町が思っているのならば、それこそ馬鹿にしてるけどね。もっと叡智が結集されてるんじゃないの?って。
昭和天皇陛下が『surrender』を使わなかったことが今日の日本人の戦争観を決定づけていると言い切ってるのもなかなか映画ならではである。テレビじゃ難しいかもね。
いずれにしても、『屈服する人と抗う人、君はどっち選ぶ?』なんて二者択一を迫るこの時代、ほんとに生きにくい世の中なんだなぁと強烈に感じ取った作品であった。ラストの広島の慰霊前の子供達のシュプレヒコールがなんとも全体主義を彷彿させて、最後迄フランスらしい風刺画の皮肉なんであろう。
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