劇場公開日 2019年11月29日

「井戸のなか」読まれなかった小説 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

3.413
14%
50%
19%
14%
3%
採点

採点する

採点するにはログインが必要です。

新規会員登録

4.5井戸のなか

ワンコさん
2019年11月30日
iPhoneアプリから投稿

最近、父の七回忌を済ませた。
なかなか、共通の価値観を見出せず、二人には軋轢も多かったような気がする。
お互いの、心ない言葉で傷付けあったこともあるが、それも、もう思い出だ。
ただ、今は位牌に向かって、母が病気になったりしないように見ててくれ…、みたいな勝手なお願いを相変わらずしている。

そして、最近、母に若干認知症の初期症状が出ている。
あまり、母親といろいろ話したことなどなかったので、その権威の先生のいる病院の行き帰り、車で片道1時間以上かかるのだが、車のなかで二人きりの助手席の母に色んな質問をしている。

最近の記憶はまだらのところもあるのだが、幼い時のことなど、鮮明に覚えていて、驚かされる。

ジェームズ・ディーンが好きで、特にジャイアンツが好きだったことは前に何度か聞いたことがあったが、戦前にミッション系の幼稚園に通っていたことなど初めて聞いた。
アカシアの綺麗な小径があったことや、その近くに、今、国の有形文化財に指定されている建物があったこと、夜遅くまで働く父親(僕の祖父)にお弁当をよく届けに行ったことなど、キラキラした思い出のように話すのだ。

戦争や戦後の大変だったことを聞いたことはないが、出来れば、何か聞く時は、楽しかった思い出に誘導しようと思う。

この間は、幼稚園で、「パパ様、〇〇」といつも唱えていたと言っていたが、運転中で聞き取れなかった。

因みに、祖母は禅宗のお寺の娘で、今で言う短大のようなところで教えていたことがあって、差別を嫌うリベラルな人だったが、戦前に母をそんなミッション系の幼稚園に通わせていたことは知らなかった。

僕は、
井戸に水は出ないように思う。

井戸を掘ることは、実は、小説を書くことと同じではないか。
そして、水が出なかったことも、小説が売れなかったことも同じではないのか。

でも、井戸には、何か、あの父子の思い出や、売れなかった小説の苦い記憶が、そして小説にも同様なキラキラものがあるように思える。

コメントする (コメント数 3 件)
共感した! (共感した人 6 件)
ワンコ
kossyさんのコメント
2020年2月3日

別々の映画にした方がいいんじゃないかと思えるほどの長尺でした。苦痛には感じなかったのはイスラム文化に触れることができたからでしょうか、貧しい農村地帯だと過激派も生まれる要素はないし、キリスト教徒なんら変わりのない穏やかな一面を見ることができたからかなぁ・・・

kossy
ワンコさんのコメント
2019年12月6日

ありがとうございます。ちょっと長い映画ですけど、観てみてくださいな。

ワンコ
きりんさんのコメント
2019年12月5日

レビュー大切に読ませて頂きました。きょうはこのレビューを読めて良かったです。

“小説”って、実はこんなにも身近にあったのだと、ワンコさんの車内でのご様子に思いました。自分の両親の人生(という小説)でさえ未読であったことを、僕も知って悔いる日々なのです。
ワンコさん間に合って良かった!

この映画「読まれなかった小説」は観ていません、探してきます。

「20センチュリー・ウーマン」を観た時に、僕は母親との別離のもったいなさを痛感しましたね。

きりん
「読まれなかった小説」のレビューを書く 「読まれなかった小説」のレビュー一覧へ(全13件)
「読まれなかった小説」の作品トップへ