「『我々に残された武器は真実だけ』」1987、ある闘いの真実 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
『我々に残された武器は真実だけ』
日本ではバブルが始まり、ゴッホのひまわりを金にあかして競り落とした昭和62年、自分はモラトリアムの始まりとも言える大学生活を始めた年、隣の国での出来事を映画化した作品。
勿論、韓流映画ならではの脚色、フィクション部分を織り交ぜながら、エンタティンメントな仕上げを施されていて、こういうドラマティックな構成は本当に見事である。もし、韓国語が理解出来たならばもっと演出や空気感を体感できるのであろうが、どうしても俯瞰で観てしまうところは勿体ないと感じてしまった。
イデオロギーや社会変革に於いて、人間の無力さは痛い程身に沁みる。社会主義であれ、軍事政権であれ、極端が始まればあっという間に暴走列車であり、そして惨たらしい行いを何の躊躇無く平然とやってのける。そうしてその憎しみは連鎖してゆき、益々凄惨さに拍車が掛かる。その泥沼の循環を止めるのも又人間以外に居ない。その奇跡のような一つ一つのバトンタッチの演出は、勿論現実的では決してないのだが、本筋である警察達の執拗な追い込みがエスカレートするほど、その運命の分かれ道の差し込みはもはやインディジョーンズに近いプロットなのであろう。社会派を纏ったさながら冒険活劇と言えるかも知れない。
ラストのオチである、元検事、看守、そして、公安のトップが顔を合せた時のカタルシスは、観客サービスとしてのご馳走だったのであろうか。唯、ここまでストーリーに凝るのならば、他のストーリーはソコソコに、あの女子大生がもっと苦難に陥り、そして活躍する部分が有っても良いのかと思うのだが・・・。でないと、片っぽのスニーカーの件も、生きてこないのかなぁと、蛇足ながら考えたりする。
いずれにしても韓国ならではの圧倒的なカロリー過多の作品、さすが“焼肉”の国である。※劇中は全く焼肉は出ないのだが(苦笑。