若い女のレビュー・感想・評価
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このヒロインのことが徐々に好きになる不思議。
冒頭からこのぶっ飛んだヒロインの個性が思いっきり炸裂する。まるで爆弾のようで手がつけられない。寄ればこちらも怪我をしそうなほど。それが性格の問題なのか、デスパレートな状況の問題なのかはわからない。彼女に「もうちょっと器用に生きてみたら?」と助言してみたところで、何ら効果は得られないだろう。
けれど、彼女の良さを一つだけ挙げるとすれば、決して止まらないこと。絶えず動き続けること。それがたとえ恐ろしく下手な泳ぎ方で、見方によっては溺れているように見えたとしても、結果的に彼女の人生がちょっとずつ前に進んでいるらしいことは、差し込んでくる光や彼女の表情から自ずと伝わってくる。そして、なぜだろう。本当に不思議なのだが、この一連の描写を受けて自分もヒロインのことが大好きになり、彼女の人生を、一挙手一投足を、心から応援していることに気づかされるのだ。そんな狐につままれたような魅力に満ちた一作である。
巧妙にデザインされてたけど余り面白くは
赤は、嘘つき、泣き虫、見栄っ張り、血の色でもあり、過去を引きずる色でもある。マイナス面というかネガティブな色。
ポーラが額から血を流す場面から物語は始まり、赤いポーラが自分勝手に暴れまくる前半。
青は、穏やかさ、落ち着き、調和、未来を掴もうとする色でもあり、プラス面やポジティブな色。
後半は次第に青く染まっていくポーラを見ることになる。
ポーラは左右の瞳の色が違うオッドアイだ。赤と青はどちらもポーラの中に存在しているもので、良い面も悪い面も合わせてポーラというわけだ。
そしてポーラは猫でもある。同僚のウスマンに猫の説明をした時に女と同じだと言い返されるシーンからもそれがうかがえる。
ポーラが猫なのではなくて猫がポーラなのか。まあどっちでもいい。要はポーラと猫が同一だということだ。
ここなら好きに鳴いていいと猫を墓地に連れていくが、猫は箱から出ようともしない。自分が羽ばたきたい場所はこんなところではないんだとポーラ自身が嘆いているようで面白い場面だった。
餌をもらえる飼い猫だったポーラが野良猫として生きる方法を模索するストーリーだったなと思う。新しい飼い主を探すように、最初のころ何件か知り合いの家に行ったりして野良としての自覚が足りない赤ポーラとか良くできてた。
詳しく書くとネタバレになってしまうので書けないが、こんな感じで巧妙にデザインされた脚本は確かに素晴らしかったと思う。
しかし、残念なことにそんなに面白くはない。
田舎から出てきてパリに暮らす女性の等身大系作品ってことになるだろうが、フランスでは標準の範囲内なのかもしれないけれど、どうも日本人感覚だとポーラは特殊な人に見えてしまって、つまりポーラに女性という大きな枠を捉えるだけの普遍性がなかった。
これが「全ての女性に」とか大層なものではなかったとしても、主人公ポーラに入れ込むほどの魅力は感じなかったので、やはりノリ切れない。
カンヌの新人監督賞を獲ったようで、そこはさすがに良いシーンなどそれなりにあり納得。
監督で脚本のレオノール・セライユはグレタ・ガーウィグみたいになっていくのかなと感じたりもした。
あと邦題だが、久しぶりにすごく良いと思った。
31歳は若いともいえるし若くないともいえる。相反する赤と青を内包するポーラを表すのにピッタリだし、ポーラの内面が幼かったことも表していてかなり良い。
この作品の主演女優はきっと化ける!
同棲していた売れっ子写真家にいきなり捨てられたポーラが、生活の糧を求めながら自立を模索する物語。久し振りにフランス映画らしい作品を観たように思います。彼と不自由の無い生活を満喫している間は自分の取り柄は美貌だけであったことに気付けていなかった主人公。独り身になって初めて世の中の厳しさを思い知るが、そんなどん底生活の中で初めて自分らしい生き方に気付く... 自由に生きたいのであれば生計の下支えや社会との折り合いがあってこそ、と言う当たり前の話なんですが、自由人を自ら任じるフランス人が演じるととんでもない大事のように見えてしまうのが、文化の違いなんでしょうけれど、凄く滑稽に思えます。ところでポーラを演じたレティシア・ドッシュはなかなかのもの。メイクの効果もあると思いますが、あどけない少女のような可憐さを見せていたかと思うと、正統派美人からあばずれ女まで何にでも豹変出来てしまうのはお見事。彼女の今後に期待。
孤独
オシャレではない方の猥雑なパリ
レ・ミゼラブル
フランス映画はアメリカ映画と違って、神の概念があまり登場しない。願うことはあっても祈ることがないのだ。祈るというのは自分以外の何かの力に期待することである。アメリカでは神や天使に祈り、God bless you(神のご加護を)という。日本では神仏に祈り、初日の出に祈って御利益を期待する。
しかしフランス人が祈る姿はピンと来ないし、フランス映画でも祈るシーンの記憶がない。フランスは美を追求する国であるが、同時にリアリストの国でもある。
本作品の主人公は、所謂世間的な長所をほとんど持っていない。美人でもなく、何かの資格や才能がある訳でもない。その上、自分勝手でおしゃべり、自覚がないから反省もしないという、あまり付き合いたくない女性である。31歳は若いのか若くないのか微妙な年齢で、若い女(原題も同義)というタイトルは思わずニヤリとしたくなるようにアイロニカルだ。実にフランスらしい。
さてタイトルにも皮肉られる主人公だが、何があってもめげない底抜けに前向きの性格で、景気の悪いパリの街でなんとか生き延びていこうとする。自分に有利であれば口から出まかせも平気な彼女だが、嘘つきではない。
自分の現在を恥じることなく堂々としている姿は、見ているうちに次第にシンパシーを覚えてくる。世の価値観に惑わされず、悲惨な自分の状況を呪うこともない。金の前に屈することも、金のない人を蔑むこともない。あくまでニュートラルに、世間の尺度ではなく自分なりの判断で生きる。
経済的なことや仕事のことを考えれば、ミゼラブルな未来しか待っていないような彼女だが、女がひとりパリで生きていくということが不思議な共感を呼ぶ。主役のレティシア・ドッシュは初めて見る女優さんだが、なかなか見事な演技だったと思う。
空っぽの女
若い?若くない?31歳は迷いの年
これは、私の共感がいっぱい詰まった映画だった
主人公のポーラは31歳
ある時、ポーラは10年間付き合った彼氏からパリの街へと追い出されてしまう。
彼と共にメキシコで暮らしていたポーラには、当てにする友人もなく、たまたま知り合った人の家を転々とし…
だいたい28〜32歳ぐらいの時というのは「迷いの年」だと思う
そろそろ結婚もしたいけど、仕事も面白くなってきたし とか
仕事に行き詰まりを感じるけど、結婚相手もいないし とか
私も、その年頃は悲しい別れがあったり、失業したりで
スキルアップの勉強をしてみたり、趣味を増やしてみたりして、いろいろとチャレンジしていた年頃だった
ポーラも、きっと10年間付き合った彼氏との結婚を意識していたはずだけれど、無残にも追い出されたことで、情緒不安定になってしまう
そりゃー誰だって、そんな状況に置かれたら情緒不安定になるわー!!
そこから、彼女は自分の生きる道を模索し始める
31歳にもなって、生きる道??自立??今さら??
と思わなくもないけれど、他の人たちが自立した20代の頃、ポーラは有名カメラマンの彼氏と共にメキシコで夢のような生活をしていたのだ
だから、人より10年遅れて自立の時がやってきたのも、すごくよくわかると思った
彼氏に捨てられたばかりのポーラは、情緒不安定だったけれど、
そこから、いろんな人たちと出会い、いろんな経験を重ねて、誰の所有物でもなく、誰にも依存しない自分を見つけ出していく
31歳という年は、周りの人たちから
「まだまだ若いから」と言われるけれど、本人からすれば「もう若くない」年である
それでも、最後にポーラが選んだ生き方を私は尊重したい
ポーラと母との関係、ポーラと元彼との関係を考えた結果の答えだと思ったからだ
28〜32歳ぐらいの頃は、仕事も、家族も、プライベートも迷いの時だと言ったけれど、
その答えを探す中で、もっとも優先すべきなのは「自分が幸せで、楽しくいられる環境」を作ることなのだ
私はラストのポーラを観て、そう確信したし、彼女のラストの表情がそれを物語っていた
私には、納得の終わり方だった
面白いなぁと思ったのが、猫
日本では、よく独身女性と猫をセットで語られがちだけれど、フランスでもそうなんだなっていうのが面白かった
古今東西、独身女性には猫がよく似合うんだなぁ
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