「ぼくらが失い続けているもの」幸福なラザロ marさんの映画レビュー(感想・評価)
ぼくらが失い続けているもの
「昔はよかった」なんて言う老人にはなりたくないものだと思う。
たいていの場合、そういう記憶は都合よく改ざんされているものだし、
今は今の、昔は昔の、人それぞれに抱える地獄があるだろうと思うからだ。
かつて小作人たちが搾取されていた時代、
彼らはより弱い存在であるラザロを小突き回していた。
牧歌的な暮らしはのどかだったが貧しく、閉塞的だった。
小作人たちは解放されても貧しかった。
相変わらず貧しかったせいで、目の前の奇跡にも気づかなかった。
ぼくらはきっと、目の前に現れる聖人を殴り殺し続けているんだろうと思う。
作中で救いは描かれなかったけれど、
ここに気づかせてくれたという一点で、見て良かったと思える作品だった。
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マサシさんのコメント
2022年1月31日
全くその通りだと思います。
社会に翻弄される個人を描いた映画に
ある画家の数奇な運命と言う映画があります。面白いと感じるのではないかと、僕は貴殿のレビュー読んで勝手に解釈しました。