劇場公開日 2023年8月25日

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「むしろ主人公は中上健次のように見えた」バーニング 劇場版 jinminさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5むしろ主人公は中上健次のように見えた

2019年2月23日
iPhoneアプリから投稿

状況に流されて、地元と血縁に囚われ、作家志望ながら何を書けばいいのかわからない、持たざる主人公。
同じく持たざる立場ながら、嘘をついて金を集め整形し、肌を出し踊って世間や金持ちに取り入り、のちに失踪?/殺害?されることになっても「グレート・ハンター」たらんとするヘミ。
焼かれる運命のビニールハウスを定期的に焼く、たまたま金を持っていることで善悪を超越してるかのように振る舞えるベン。

何もしなくても観客としてそこにいることを許されるベンとその友人たち、そこにいられるように芸をするヘミ。
やりきれなくそれを見る主人公とアクビと愛想笑いのベン。

パントマイムのコツとは無いことを忘れること。
陽の当たらないヘミの部屋には、1日1度だけ展望台から反射した光が射す。
その光を眺めながらヘミとセックスをする主人公。
ヘミの不在時のその部屋で、主人公は姿の見えない猫に餌をやり、光を求めるように自慰行為をする。
ヘミの失踪?/殺害?後、主人公は怒りと焦燥を原動力に、ベンの実態と犯罪を明らかにしようとし、やがてヘミの部屋で、光を捉えるように何かを書き始める。

フラットな洗練された原作を、貧富の差という現在性で改変することで、表現行為の根本に怒りと焦燥を据えた傑作。

jinmin