「リトルハンガーとグレートハンガー」バーニング 劇場版 KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
リトルハンガーとグレートハンガー
連発される意味深な言葉の数々に注意しながら追っていたけど、かなり分かりやすい比喩と捻りなくストレートな話の展開で少し拍子抜け。
ここから面白くなるのか?というポイントがいくつも出てきては、その度にことごとく裏切られて残念な気分だった。
社会的底辺な二人と自分が少し重なり、ギャツビーなベンに向けるジョンスの微妙な目付きに共感。
ただ、ヘミの部屋でのジョンスの行動がだいぶ気持ち悪くて、それ以来彼へ寄り添う気になれず。
いやまあ分かるけどさあ…普通に気持ち悪いです。
ジョンスのキツい家庭状況やヘミの孤立加減を表す描写の居心地の悪さは好き。
特に想像を絶することのないラスト、結局は同じ穴の狢だとも思えた。
結末のその向こうを想像するしかないけど。
印象的なフレーズの多い作品だった。
無いことを忘れる、何の価値もないビニールハウスを燃やす、女のための国は無い、リトルハンガーとグレートハンガー、ベースを感じる、井戸に落ちる、など。
それぞれの意味を探ってみるけど、物語自体への興味がかなり薄れてしまうと何だかどうでもいい気分にもなってくる。
ただ、簡単に忘れることもできなさそう。
何だかんだ頭に焼きつき自分に刺さってくることも。
ヘミやベン、そもそもこの映画内で起きる事や在るもの全てがジョンスの小説なんじゃないかとか、様々な存在に疑問を感じさせる作り。
映画という創作物に日常的に触れて寄りかかっている身としてはなかなかキツかった。
お腹が空いたところから人生の意味を問い出す、というのは何となく理解できる。
鑑賞後、この映画へ向ける感情の行き場のなさとなんとも言えないポッカリ感は、やたらと「無い」や「消える」ことを強調していた作品自体の意図にハマってまんまと手の内に入ってしまったことになるのかな。
何にしろ、特に楽しめなかったのは事実。
タバコの灰皿代わりの紙コップに唾液を垂らすのが一番衝撃だったかもしれない。
あとヘミの可愛さ。ミューズ的な撮り方は苦手だけど。