「白い煙が」バーニング 劇場版 nakadakanさんの映画レビュー(感想・評価)
白い煙が
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原作は未読です。
暗喩的な台詞が多く謎があるストーリーですが、主人公の視点で、日常生活の中で不穏な疑惑が膨らんでゆく様子には引き込まれました。
明確な説明や解答は示されず、何を信じるかどう判断するか、主人公と同じように考えさせられます。
どこか途方に暮れたような風貌の主人公は、若者の漠然とした不安感や孤独感が滲み出ているような、垢抜けない雰囲気と言いますか、モッサリ感が絶妙で素晴らしい思います。
エキセントリックで奔放ながらどこか脆さもあるヒロインや、紳士的な物腰の中に不穏さを垣間見せる謎の男も、各々に見事な存在感のある演技でした。
富裕層との格差、華やかな都市と寒村との対比といった社会的背景を示す細かな描写も、説得力があります。
主人公とヒロインが男に誘われ富裕層の若者達と酒を飲むシーンがありますが、その場での主人公の居心地の悪さに、彼らとの格差、断絶感、異質感を痛感させられるような、個人的にはかなり刺さるシーンでした。
ポスターに衝撃のラストなどと書かれていますが、展開としては途中で予想は出来たので衝撃という程ではないと思います。
しかし、鬼気迫る長回しのクライマックスは印象深いものでした。
雪の中の全裸というのは、映像的に衝撃ではありましたが。
冒頭の白い煙と相対するようなラストの黒い煙が、主人公の変容を示しているのか、漠然とした不安が明確な怒りに変容したのかと感じました。
ヒロインのことだけではなく、境遇や社会など全てへの怒りなのかと。
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